遺品整理のその後に

 湊さんの体験した出来事なのだそうだ。彼は遺品の買い取りなどを行っているが、時折それなりにヤバイものがあるらしい。


「基本的には不用品の買い取りなんですがね、たまに曰くのあるものを押しつけてこられる方がいるんですよ」


 彼は非常に嫌そうにそう言った。


 その日はいつもの買い取り業務だった。依頼者の父が亡くなったということで、まわりも落ち着いてきたので気持ちにキリを付けるために遺品をいくつか買い取って欲しいと言うことらしい。


 相場から離れた金額で買い取ったりはしないのだが、どうしても遺品ということで多少は引かせてもらっている。そういうのを気にしない人は気にしないのだが、やはり成金が買って飽きて売ったものとでは買ったときに気分的に違うのか、どうしても安くはなる。


 その日も一通りのものを買い取ったのだが、何故か化粧台を買い取ってくれと言う。亡くなったのは父親だったという話だが、なぜ化粧台を一緒に売りたいのだろう?


 それを聞くこともできず、何とかそれっぽい理由を頭の中でこね回して営業スマイルで買い取ると言った。


 ところがそれが結構な品だった、見るからにいい木材を使用していて、鏡に錆が浮いたり引き出しの動きが悪かったりすることもない。


 困ったことにこれだけの品だと専門の所へ売った方がいい値段になる。そもそもこちらで買っても販路というものが見つからない。ブランド物のバッグや財布ならいくらでも売り先はあるが、このデカブツは書いてを選ぶ品だ。


 その通りに伝えて買い取りは難しいと言ったのだが、ご婦人はなんとしてでも買い取ってくれと言う。しまいにはこちらの言い値でいいから買い取ってくれというので、断られるであろう法外に安い金額を提示したところそれでいいので買い取ってくれと言われた。


 何かあるのだろうとは思ったのだが、こちらも法外な値段を提示した手前引っ込みがつかず買い取ることになった。


 そうして買い取ってから倉庫に丁寧に梱包して売り先を探すことにした。アレだけいい品なら何処かで買ってくれるだろう、そう思ったのだがその晩のことだ。


 深夜、倉庫を閉めて帰ろうとしたときにガチャンと音がした。大きな音だったので何かあったのかと思って閉めかけた扉を開けると、あの化粧台が倒れて鏡が粉々に割れていた。


 やっちまったか、とは思ったものの、あの処分先に困りそうなものをゴミとして捨てられる理由ができたのにどこかホッとした。


 それは丁寧に処分業者に頼んで処分してもらった。ただ、その時に馴染みの業者が「こんなん掴まされたんか」と言われたのは記憶に残っている。彼にも何か感じるものがあったのかもしれない。そして何かを売ってきたあのご婦人も知っていたのだろう。だがもうそれは壊れて終わってしまったことだ。


 そう思っていたのだが、半年くらい立った後、あの遺品を買い取った家の近くを通ることになった。なんとなく後ろめたかったのだが、謝るくらいしか出来ないだろう。思い出の品を壊してしまったということで、謝罪くらいはしておこうとその家への道を車で走った。


 ただ、その家の前を通ったとき、忌中の札が玄関に貼ってあるのを見た。もちろんアレと何か関係があるのかは分からない、だがその偶然があまりにも気味が悪いのでその家には立ち寄らず去った。


 その時のことは何の根拠も証拠もないのだが、あの忌中の札はあのご婦人が亡くなったからだろうと思っている、これも業者の勘というヤツだ。


 彼はこれを微笑みながら話した。「こんな事は日常茶飯事なんでね、いちいち気にしてたら生き辛いんだよ」と軽口を叩いていた。

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