1997年の大学生サークルを舞台にした本作は、「終電を逃してホテルに泊まる」という青春恋愛の王道シチュエーションを、過剰にドラマチックにせず、ありのままの会話劇で見せてくれるのが魅力です。
主人公・禅と同期の晴美との掛け合いが終始テンポよく、軽口の叩き合いやおふざけの中に、二人の間にある絶妙な距離感がじわじわと滲み出てくる構成は秀逸でした。「何もしないから」という前提のはずが、股間を殴られたり、覆いかぶさったり、布団の中で脚が触れ合ったりと、コメディとちょっとした緊張感のバランスが良く、読んでいて飽きません。
特筆すべきは、「実話ベース」と明記されている点も含め、当時のディテール(ミスチルの「over」、カクテルパートナー、カラオケでの思い出話)が自然に会話に織り込まれていることです。前作「アラフィフおっさん」同様、作者の90年代への愛着とリアルな空気の再現力が活かされており、単なる学生時代のラブコメ以上の説得力を感じさせます。
エピソードタイトルを見ると「距離を見誤ったのは、どっち?」「4年後」と時間軸が動いていく構成のようで、その後に「憧れの女性がセックスレスなのに夫に浮気されていた話」「悪友の元カノから電話が来たが様子がおかしい」と続編的なオムニバスが連なっており、青春の一夜から始まり、その後の人間関係の変化まで描く射程の長さも興味深いです。
性描写有りのタグの通り大人向けの要素も含みますが、ここで読めた範囲では、肉体的な接触よりも「言葉にしない感情のすれ違い」を丁寧に描くタイプの恋愛ドラマだと感じました。次のエピソードでどちらが先に距離を詰めるのか、続きが気になります。