企画より読ませていただきました。
「私だけを見て」という願いが、ここまで静かに歪んでいくのかと、読みながら少し息苦しくなる作品でした。
最初にあるのは、恋人の浮気を知った女性の怒りや傷つきです。
けれど、その感情がまっすぐ爆発するのではなく、日常の中で少しずつ形を変えていくところが怖かったです。
GPS、スマホ、大学、ファミレス、カフェ。
出てくるものはどれも身近なのに、愛莉の見ている世界だけが、少しずつ別の場所へずれていく。
そのずれ方が、派手な狂気ではなく、本人の中ではちゃんと筋が通ってしまっている感じなのが印象に残りました。
愛莉だけではなく、涼真の側にも危うさがあるのも面白かったです。
一方的に壊れていく人と、それに巻き込まれる人、という単純な関係ではなく、涼真もまた「見られること」や「選ばれること」にどこか囚われているように見えました。
だからこそ、2人の関係は恋愛というより、互いの寂しさや欲を噛み合わせてしまったもののように感じます。
花乃の存在も効いていました。
途中までは、少し距離の近い友人として読んでいたのですが、終盤で彼女の立ち位置が変わることで、物語全体の見え方も変わります。
誰かに愛されたい。
自分だけを選んでほしい。
その気持ちは、たぶん誰の中にも少しはあるものだと思います。
でも、それが相手の自由や人生まで飲み込もうとした時、愛情はかなり残酷なものになる。
読み終えたあと、タイトルの「私だけを見て」が、甘い言葉ではなく呪いのように残りました。
静かに重く、後味までしっかり残る作品でした。