掌編「相棒とくっつかないと能力が暴走するので」で描かれたアステルとブリオのバディが、12万7千字・35話の本格異世界ファンタジーとして生まれ変わった作品だ。
掌編版との最大の違いは文体の質感だ。コメディ調の自己ツッコミが消え、代わりに「目に見えない何かが肺の奥まで入り込み、内側から身体をきしませるような圧迫感」という感覚描写が積み重なる。アステルの「強すぎる孤独」が笑いではなく、真摯な恐怖として描かれている。
既存レビューが指摘する「アステルは弱いから悩むのではなく、強すぎるから誰も守れないという矛盾の中にいる」という核心は第1話の時点で完成している。胃が痛いほどの第一任務で、誰かを守りたいのに動けない——その刹那にブリオが服の裾を掴む場面の温度が、物語全体の重心だ。
「まだ恋じゃない。そんな甘いものでは、まるでない」という一文と、「その言葉が任務の決意だけではなくなる未来を知らない」というラストの一文が、この35話がどこへ向かうかを静かに告げている。
エンターブレイン長編コンテスト応募中・完結済み35話・12万8千字。掌編を先に読んでから本作へ来ると、ほしわた氏が同じ素材でどれだけ違う温度の物語を作れるかが分かる。
強さの孤独を主軸に置いた作品なのかな。
アステルは弱いから悩むのではなく、強すぎるから誰も守れないという矛盾の中にいる。その苦しさは新鮮かつ普遍的。
力を持つことと、それを力を使いこなすことは別問題だというのは府に落ちる。
ブリオとの関係の進み方も技巧的だ。
二人の距離が詰まる理由が物理的な必然として設定されているから、感情の接近が言い訳なしに描かれる。着替えの場面も、浴場の場面も、恥ずかしさと切実さが同居していて、甘さに溺れずに笑える。ブリオの秘密が明かされる湯気の中の会話は、この作品で最も静かで、最も誠実な場面だった。