まず何と言っても、おっさん物理学者としての前世の知識をフル活用するパートが面白い。異世界の非効率な魔術を、現代の数式を使ってサクサクとデバッグしていくあの爽快感は、一度味わうとクセになる。
しかも、主人公の中身が完全に図太いおっさんなのがまた良い味を出してる。
麗しい美少年の外見とのギャップはもちろん、魅力的なヒロインたちに囲まれている華やかな状況なのに、頭の中では常に物価高や保険料の心配をしているという、妙にリアルで所帯じみた思考には毎回クスッとしてしまう。
でも、この作品の本当の凄さは、ただの異世界無双もの・コメディものでは終わらない点にある。
失った妻・静への一途すぎるほどの愛。それは時に狂気じみてすらいて、彼が抱える深い贖罪の念とともに、物語に圧倒的な深みを与えている。