屋上のベンチ、ラムネの瓶、春と冬の間の曖昧な陽気——柔らかな日常の描写から始まる物語は、二人のやりとりの温もりに引きずられるように静かに進んでいく。
病室の結婚式の場面が忘れられない。
シーツのドレス、片言の誓い、笑い声——不条理なほど微笑ましく、しかしサイダーの泡と共に言葉にならない何かが滲む。
そして最後の一節で、すべての描写が意味を変える。
ラムネとサイダーの違いにこだわる小さなやりとり、赤い糸、透ける身体——読み返すと、最初から全部仕込まれていた。タイトルの意味も、その時初めて腑に落ちる。
優しくて、少し切ない読後感を残す短篇。