「不思議は、解いたら負けだ。」
この作品を読み進めるほど、その言葉がとても好きになりました。
深夜の公園で交わされるのは、奇妙な出来事の真相を暴くための推理ではありません。
現実だけでもなく、怪異だけでもない。
ほんの一滴だけ、世界に不思議を残すための二人の戯れです。
けれど、特に心に残ったのは、その『少し不思議』に二人の心が表れていることでした。
同じ謎を前にしても、瞳が差し出す答えと、主人公が選び取る答えは違う。
どちらが正しいかではなく、どんな結末なら信じたいと思えるのか。
その違いから、それぞれが世界をどう見ているのかまで、少しずつ伝わってくる気がします。
中でも「空っぽの思い出」をめぐる夜は忘れられません。
不思議を語っていたはずなのに、いつの間にか、記憶すること、忘れること、誰かが確かに存在したことへと話が届いていく。
そして夜を重ねるほど、謎そのものよりも、猫缶を食べながら不思議を語る瞳という少女の方が、少しずつ気になっていきます。
すべてを明るみに出さなくてもいい。
名前をつけず、答えを決めず、そのまま残しておくことで守られるものもある。
そんなことを思わせてくれる、夜の静けさのように余韻の残る物語でした。