第19話
翌日。
教室に入ると、いつもより少しだけ視線を感じた。
(⋯⋯まだ、あるんだ)
昨日のこと。
あの新聞のこともあって、完全には落ち着いていない。
少しだけ俯きながら、自分の席に向かう。
「ねえ」
不意に、声をかけられる。
「羽月さん、だよね?」
「⋯⋯え」
顔を上げると、見慣れない女子が立っていた。
柔らかい雰囲気で、どこか安心する表情。
「急にごめんね」
少しだけ困ったように笑う。
「高瀬ひかりっていうの。隣のクラスなんだけど」
「⋯⋯あ、はい⋯⋯」
戸惑いながら頷く。
(⋯⋯なんで)
自分に話しかけてくる理由が分からない。
「この前さ、ちょっと見かけて」
言いづらそうに、少しだけ声を落とす。
「大丈夫だったかなって思って」
「⋯⋯っ」
胸が、少しだけ揺れる。
あの場面を見ていた人がいた。
でも。
「責めるとかじゃなくてね」
すぐに続ける。
「ただ、ちょっと気になって」
その言い方が、やわらかくて。
(⋯⋯優しい)
そう思ってしまう。
「⋯⋯大丈夫、です⋯⋯」
小さく答える。
「そっか」
ほっとしたように笑う。
「よかった」
少しだけ、間。
「あとね」
少しだけ、明るい声に戻る。
「雪乃とよく話してるよね?」
「⋯⋯え」
思わず、反応が遅れる。
「なんか、気になってさ」
くすっと笑う。
「どんな子なんだろうって」
(⋯⋯どんな子)
そんなふうに言われるのは、慣れていなくて。
「⋯⋯普通です⋯⋯」
思わず、そんな返事になる。
「ふふ、そっか」
否定しないで、受け取ってくれる。
「もしよかったら」
少しだけ遠慮がちに。
「仲良くしてもいい?」
「⋯⋯え」
予想していなかった言葉。
(⋯⋯仲良く)
どう返せばいいか、分からない。
でも。
目の前の人は、押しつける感じじゃなくて。
ただ、待っている。
「⋯⋯あの⋯⋯」
少しだけ、息を整えて。
「⋯⋯私で、よければ⋯⋯」
「ほんと?」
ぱっと、表情が明るくなる。
「やった」
少しだけ嬉しそうに笑う。
「じゃあ、よろしくね」
「⋯⋯はい」
小さく頷く。
そのとき。
ふと、視線を感じた。
教室の入口。
そこに──
雪乃さんが立っていた。
「⋯⋯」
一瞬、目が合う。
でも。
すぐに、逸らされる。
(⋯⋯あれ)
いつもと、少し違う。
「どうしたの?」
ひかりが、小さく聞く。
「⋯⋯いえ⋯⋯」
首を振る。
でも。
(⋯⋯なんか)
胸の奥が、少しだけ引っかかる。
さっきの視線。
ほんの一瞬だったのに。
(⋯⋯気のせい⋯⋯?)
そう思いながらも。
なぜか、落ち着かなかった。
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