春を感じる昼下がり。母親に手を引かれ、お山に向かって少女は歩く。どこに行くのか。どこまで行くのか。不安がよぎる。お腹もへった。道にへたり込んで泣く母と子に、声をかける者がいた。状況に似合わない、穏やかで優しい声。「あらあら、どうしたの?」それは白髪の老婆だった。幼い日の記憶の話。とても美しい話。お題である「春の宵」という言葉が、すうっと心に沁み込んできた。