世界の裂け目を閉じる管理人クスィーと補佐官ベータが、製薬会社の管理区画で「現代科学では説明できぬ存在」と向き合う——SFとミステリーの境界を漂うような設定が、独特の緊張感を生んでいる。
「存在を観察することは、観察されることでもある」という一文が示す構造的な反転が秀逸で、謎を解く行為が自分自身の知らぬ自分を知ることへと繋がっていく。「忘れた者と、忘れられた者の物語」という対句的な概要も、単なる怪異の記録ではなく記憶や忘却そのものをテーマにした奥行きを感じさせる。「逆さに開く傘」のような各話タイトルの不穏な具体性も、読み進めたくなる引力になっている。
不定期連載・全12話。月四〜六回更新というペースで育っていくシリーズの序盤、世界観の解像度がどう深まっていくのか楽しみな一作だ。