上下で世界が巧みに移ろう構成がまず印象的です。
上では春香の偽物ばかりの世界を飛び出したい気持ちが全面に出ていますが、下で本物の空や雨や獣や桜が描かれることで、その憧れにきちんと説得力が出てきます。
そのうえで、颯太にとって大事だったのは世界の真偽そのものではなく――(あとは直接お読みください)、といった着地に胸を動かされます。
レモネードも、ただの小道具ではなくて、二人の記憶そのものでもあって、最後に残る空き缶がとても響いていました。
SFの体裁なのに、読み終えると一番残るのは設定よりも感情で、そこがとても秀逸だと思いました。私自身SFはあまり読まないので、感情ベースで進む展開は作品として共感しやすかったです。