女性で派遣の仕事をしている主人公は、派遣先で名前では呼ばれず「派遣さん」と呼ばれていた。そんな主人公のささやかな日常を綴った、日常系お仕事小説だ。派遣であっても業務内容が楽なわけでも簡単なわけでもない。もちろん、責任もある。朝、満員電車に揺られ、デスクに着いて電話の対応やコピー、書類作成に追われる日々。しかし、名前を呼ばれることはない。正社員ではないから、それは仕方ないと思っていた。
しかし、ある日主人公は名前で呼ばれた。そのほんの些細なことが、嬉しかった。そして時には別れを経験して自分の仕事と向き合ったり。
大きな事故や事件は起きないから、決して派手な展開は今のところないが、働くとはこういうことで、それぞれが役割を分担しながら紡いでいくものだと教えられる。そして日常の中に潜むちょっとだけ苦い部分や、甘い部分も加味しているからこそ、生きていけると。
この作品の一話一話は、「まあ、いいか」という言葉で締めくくられる。多くの場合、その言葉は「妥協」や「諦念」として受け取られるという印象があるが、この物語では「強さ」だと思う。変わり映えの無い一日を積み重ねていく強さ。平凡な一日でも、そこにあるちょっとした変化に気付ける強さ。柔らかい筆致で描かれる、一人の女性の日常と強さの物語。働いている人だけではなく、まだ働いたことのない方にもお勧めします。
是非、ご一読下さい。
悪気のない「派遣さん」という呼びかけや、社員食堂でのちょっとした負担額の違いなど、オフィスのリアルな距離感がすごく静かに描かれていて、情景が自然と浮かんできました。
ただ切ないだけではなくて、お給料日にこっそり明細を見て「今日はお金に余裕があるぞ」と密かにテンションを上げたり、お弁当の卵焼きを褒められてホッとしたりする鈴木さんの心の動きがとても人間味にあふれていて、読んでいて自然と応援したくなります!
少しずつ職場に自分の居場所を見つけていく鈴木さんの姿に温かい気持ちになれました。この先、彼女がどんなふうに周りと関わっていくのか、続きも読ませていただきます!!
「名前があるのに、呼ばれるのはいつも『派遣さん』」
派遣社員として働く鈴木愛さんの、何気ない毎日を描いた物語です。
名前を呼んでもらえたこと。
仕事を任せてもらえたこと。
「ありがとう」「助かったよ」と言ってもらえたこと。
そんな小さな出来事が、思っている以上に一日を支えてくれることがあります。
反対に、誰かにとっては何気ないひと言が、自分でも驚くほど胸に残ってしまうこともある。
この作品は、そんな働く中で生まれる小さな心の揺れを、とても静かに、丁寧にすくい上げています。
けれど、つらさだけを描いているわけではありません。
誰かに頼られた嬉しさ。
何気ない会話のあたたかさ。
うまくいかない日に、自分へ少しだけあげるご褒美。
そんな小さな喜びを見つけながら、愛さんはまた次の日へ向かっていきます。
職場には、それぞれの立場があり、それぞれの事情がある。
だから簡単に誰かを責めたり、何が正しいと言い切ったりすることはできないのかもしれません。
それでも、ほんの少し相手のことを想像すること。
名前を呼ぶこと。
感謝を言葉にすること。
そんな小さな優しさが、誰かの一日を支えることもあるのだと思いました。
そして読み進めるうちに、私は愛さんへ「頑張れ」と言うよりも、「今日もお疲れさま」と声をかけたくなりました。
きっと、人はそれぞれの場所で、毎日もう十分に頑張っている。
だからこそ、ときには「もっと頑張らなくちゃ」ではなく、
「今日もおつかれさま」
そして、誰かが失敗したときには、
「お互いさま」
と言えるくらい、少しだけ肩の力を抜いてもいいのかもしれません。
そんな優しさまで、この物語から受け取った気がします。
そして気づけば、もう私の中で彼女は「派遣さん」ではありませんでした。
鈴木愛さん。
これからも、その毎日をそっと応援したいです。
『派遣さん』――そう呼ばれるたびに、胸が少しだけ痛くなる。
名前は、ちゃんとある。それなのに職場では、いつも『派遣さん』。
「みんな仲間だから」と言われて、少し期待してしまう。でも、現実はそんなに甘くない。
ミスをすれば厳しく指摘される。
同じミスをした社員には、笑いながら「気をつけろよ〜」で終わり。
その違いに気づいた瞬間、胸に刺さる小さな棘。
でも、この物語は「派遣はつらい」で終わらない。
ある日、名前を呼ばれる。
たったそれだけなのに、『派遣さん』の胸がじんわり熱くなる。
そして、別の日には――
「助かったよ、ありがとう」。その何気ない一言に、『派遣さん』は思う。
自分は、ここにいてもいいのかもしれない。
大きな事件は起こらない。劇的な展開があるわけでもない。
けれど、だからこそ刺さる。
そんな孤独を抱えながら、それでも毎日を頑張る『派遣さん』の姿が、静かに心へ入ってきます。
読者のあなたにとっても、いつの間にか『派遣さん』ではなく、彼女の名前を呼んでいるはずです。
そして、その先には――。
『派遣で働く人』はもちろん、会社という場所で少しでも「自分はここにいていいのかな」と感じたことがある人に読んでほしい作品です。
「今日も頑張る、派遣さん」。
その一言が、読み進めるほど好きになっていきます。
現在、第56話まで公開中の連載作品です。
ぜひ一緒に、『派遣さん』の毎日を追いかけてみませんか?
職場小説としてとても痛く、現場を知る人間には、笑えない読了です。
会社は、指揮命令の中間管理職にこう言うのだ。
「派遣は社員ではない。いらない教育はするな。ノウハウを渡すな。任せず属人化させないよう監視しろ。契約解除を悟らせるな」
それでいて、不和を起こすな、とも言うのだ。
結果、距離を置いたコミュニケーションにしかならず、派遣された人はどんどん削られていく。
逆に、削られず、鎧をどんどん着込んだ強い派遣とはどうなるか。豚はよくこういう生き残った方とよく一緒に仕事をする。
人に教えない。
人を育てない。
人に任せない。
人が入ってくると邪魔だから排除しようとする。
地獄である。
この作品の怖さは、「派遣さん」と呼ばれる側の痛みだけではない。
職場の中で、強くなりすぎた人間が、強さの使い方を間違える怖さまで示唆しているところだと思う。(*´ω`*)
派遣社員という立場が、外の人、派遣の人と区分される要因になる。
当事者ではなければ、ちょっとしたことのようだけれど、当事者にはいろんな悩みがある。
一つひとつの仕事、決まりごと、常識になっていること、それが分からないこと。
周りと同じ立場なら簡単に聞けても、立場が違えば聞きづらいこともある。
日々過ごすだけで、大変さ、線を引かれる切なさがある。
同じ仕事をしているのに、その立場だけで扱いが変わる。
それでも、やらなければいけないことは目の前にあって、がんばってそれを一つひとつ片付けていく。
ちょっとしたできごとを、喜びとして自分の力にしていく。
少し息苦しさを感じる毎日、そんな中でも一つひとつ積み上げていく、がんばっていて、応援したくなる主人公の物語です。