職場小説としてとても痛く、現場を知る人間には、笑えない読了です。
会社は、指揮命令の中間管理職にこう言うのだ。
「派遣は社員ではない。いらない教育はするな。ノウハウを渡すな。任せず属人化させないよう監視しろ。契約解除を悟らせるな」
それでいて、不和を起こすな、とも言うのだ。
結果、距離を置いたコミュニケーションにしかならず、派遣された人はどんどん削られていく。
逆に、削られず、鎧をどんどん着込んだ強い派遣とはどうなるか。豚はよくこういう生き残った方とよく一緒に仕事をする。
人に教えない。
人を育てない。
人に任せない。
人が入ってくると邪魔だから排除しようとする。
地獄である。
この作品の怖さは、「派遣さん」と呼ばれる側の痛みだけではない。
職場の中で、強くなりすぎた人間が、強さの使い方を間違える怖さまで示唆しているところだと思う。(*´ω`*)
派遣社員という立場が、外の人、派遣の人と区分される要因になる。
当事者ではなければ、ちょっとしたことのようだけれど、当事者にはいろんな悩みがある。
一つひとつの仕事、決まりごと、常識になっていること、それが分からないこと。
周りと同じ立場なら簡単に聞けても、立場が違えば聞きづらいこともある。
日々過ごすだけで、大変さ、線を引かれる切なさがある。
同じ仕事をしているのに、その立場だけで扱いが変わる。
それでも、やらなければいけないことは目の前にあって、がんばってそれを一つひとつ片付けていく。
ちょっとしたできごとを、喜びとして自分の力にしていく。
少し息苦しさを感じる毎日、そんな中でも一つひとつ積み上げていく、がんばっていて、応援したくなる主人公の物語です。
人は生まれながらにして平等だと色んな人が言うけれど、現実は残酷なものだ。家に動物園や博物館を作り恋人といちゃついている人もいれば、毎日貧しい食事にため息を吐いて、スカスカの銀行口座を前に未来を嘆く人だっている。同じホモ・サピエンスで、何故ここまで差が生まれてしまったたのだろう。
そして、そんな極端な例じゃなくても似たような事は探せば無限に見つかる。本作の主人公、鈴木さんは派遣社員さんだ。みんなと同じくらい頑張り、一生懸命仕事をこなしているけど、どこかでライン引きされてしまう。そんな孤独が、ますます鈴木さんを人見知りにしてしまう。社食の値段差にため息したり、悪意なき差別にモヤモヤしたり……
それでも、鈴木さんは頑張ってる。へこたれずに、毎日真面目に働き続けている。そんな姿は、とても健気で応援したくなるもの。悪いことは色々あるけれど、良いことだって色々ある。そんな日常を、鈴木さんは送り続けるのだ。
なかなか名前で呼んでもらえない愛さん。
コピー機対応や電話応対、お昼の過ごし方といった何気ない場面のひとつ
ひとつに不安や戸惑いを感じながらも、彼女は確かに少しずつ前へ進んで
いきます。
誰かに一歩近づけたり、小さな「分からない」を自分から聞けるようにな
っていく、そんな変化が読んでいる私たち読者に感動を生みます。
派遣という立場の弱さや距離感を強調しすぎるのではなく、その中で生ま
れるささやかなつながりや温かさに焦点を当てている優しいお話です。
「愛さん、今日もお疲れさま」とつい声をかけたくなる、
とてもとてもおすすめな作品です✨