皆さま。アーベル賞をご存じでしょうか。
……という出だしと、ドラマと歴史的知識を絶妙な配分で織り交ぜる筆力にデジャヴを覚えて、作者様の過去作品を確認したら。
こちら、人工雪の開発者について書かれた『雪は天から届く声』と同じ作者様なのですね。しかもそれより前の作品。気が付かなかったんかい。その……人の名前を覚えるのがゴニョゴニョ。
ここで勝手に宣伝するのもあれなのですが、『雪は天から届く声』もお勧めしており、リンクは下記のとおりです。
https://kakuyomu.jp/works/2912051600999288074
と出だしから話がそれにそれまくったのですが。
話を戻します。アーベル賞はご存じでしょうか。実はぼく、知りませんでした。もうひとつのフィールズ賞なら知っていたのですが。
有名な話ですが、ノーベル賞に数学部門はありません。あるのは、物理学、化学、生理学・医学、文学、平和および経済学。平和だけなんか抽象的だな……と昔から思っていたのですが、数学はハブにされているのです。大学の理学部と言えば数学、物理、化学、生物なのに。
本作は数学のための賞のひとつである、アーベル賞のきっかけとなった(生誕200年を祝して)人物——ノルウェーの数学者ニールス・ヘンリック・アーベル(作中表記はニルス)
を、見守ったふたりの人物視点で描かれる、ニルスの晩年を描いた物語です。
そしてそのふたりとは、ニルスの婚約者と、ニルスの友人です。
ふたりは、無理をしてまで数学研究へ没頭するニルスを見て、胸を痛める。友人の方は、ニルスが無理をしている理由を知っているがゆえに悔しくもある。(理由とは何ぞやはぜひ直接ご確認ください)
婚約者にいたっては、そもそもこんな研究バカをよく愛せるな、という話なのですがその理由が語られた時、胸が熱くなります(この理由もぜひ直接……)。数学好きらしきある種の口説き文句に、心が温かくなります。
ですがラスト。友人や婚約者がタイトルにある手紙を受け取った時、読者も悲しみのどん底へ突き落とされます。あと少し。あと少し、早く届いていればと、胸が張り裂けそうになります。
お勧めです。
早くにして亡くなった、苦労多き天才数学者ニルス。作者様の解釈を交え、友人と婚約者の視点を借りて描かれたひとつのドラマをぜひ、その目で確認してみてください。