記憶を失った少女「メネス」が目を覚ましたのは、どこか不気味で、けれどこの上なく優雅な列車の中。出迎えたのは、赤い瞳を持つミステリアスな車掌・エヌ。
この作品の魅力は、なんといってもその独特な「空気感」にあります。
窓の外を這う異形の影や、贅を尽くした「宇宙」の味がする料理。そんな少し怖いけれど覗いてみたくなる幻想的な世界を、メネスは時に愚痴をこぼし、時においしそうに食事を楽しみながら、等身大の女の子として歩んでいきます。
特に、第2話、第3話と進むにつれて描かれる「食事」の描写は必見です。列車の優雅なフルコースから、街での素朴な硬いパンまで、五感を刺激する文章が物語に不思議なリアリティを与えています。
しかし、物語はただの「癒やしの旅」では終わりません。
第3話のラストで突きつけられる、あまりにも残酷で衝撃的な展開。
「彼女は何者なのか?」「なぜ世界に拒まれるのか?」
散りばめられた謎が、読者を一気に物語の深淵へと引きずり込みます。
美しい幻想文学のような香りと、ハラハラするミステリー要素。
一味違う「異世界旅」を味わいたい方に、ぜひ手に取ってほしい一冊です。
彼女の指先が扉に届くとき、一体何が起きるのか。その目で見届けてください。