死刑判決が確定した男へ、一人の主婦が手紙を書くところから始まる物語です。
家族の中で取り残され孤独を抱える主人公と、拘置所の中で時間だけを持て余す死刑囚。
決して交わるはずのなかった二つの孤独が、手紙を通して静かに触れ合っていきます。
二人の関係は、恋愛とも好奇心とも言い切れない。
誰にも届かなかった感情が、そっと掬い上げられていく。
その静かな変化に引き込まれ、読後も余韻として残りました。
台所、郵便受け、湯呑み、季節の花。
日常の小さな描写の中に、孤独の輪郭が丁寧に描かれています。
静かな文芸作品が好きな方、説明されすぎない余韻を味わいたい方に、ぜひおすすめしたい作品です。