サメ映画というものをご存じでしょうか。
「全米が泣いた!」という宣伝映画に興味がある方には
少しばかり遠い存在かもしれません。
サメ映画、それはどこまでもどこまでも
自由を尊び、混沌を愛する映画(と思ってます、私が勝手に)。
この作品は、まさにそれと同じくする作品だと感じました。
どこまでも未確認生物を愛する老齢の主人公。
古本屋で見つけた「サメを自在に操る本」なんて、
もうお宝でしかありませんよね。
それで、実際に呼び出してしまいます。
ただジョーズに呼び出した後に気が付いた。
海に返す呪文はどれだ!?
作品総文字数はたったの二千文字。
そこに広がる焦り、混沌、自由、そして笑い。
どうしてこうなった? が要所要所に繰り広げられ
これまでの人生で鮫映画を見てこられた方からすると
「あれのオマージュか!?」
と思ってしまう世界観。
それでも実に美しくまとめられているから本当に素晴らしい。
良作です。
しっかり、細部まで読み込んでくださいませ。
その価値が、この作品にはあります!
サメ。それはもはや、「種族」という枠組みを超えた、なんかよくわからない「記号」のようなものと言えるかもしれない。
本来は海で生息し、たまには人を襲ったり、割と可愛いのもいたり、なんか凶悪だけど愛らしかったり、そんなアイコンみたいな奴ら。
しかし、ひとたび映画(というかその名を関する実写的な動画)の世界になっていくと、サメはなんか足がついてたり、空から降ってきたり、なんか温泉から出てきたり、「カオス」の象徴にもなっていく。
本作では、「とある呪文」によってサメたちにありとあらゆる干渉を加えられるようになり、そこからサメたちが様々な形態に変化していく様がとても楽しく描き出されています。
サメ映画に詳しい人なら、「これ、あの作品のあれか」と思うのもあってニヤリ。そして、「いやいや、さすがにこれはカオス過ぎでしょ」と思って検索してみたら、「あった! この映画、本当にあった!」と驚かされたり。
本作で出てくる呪文を開発したのは、どこかのカオスなサメ映画の監督やもしれぬ。そんな「作家性」がぷんぷんと滲むようなマジカル具合がとても魅力的です。
そんなサメならではのカオスと愛をふんだんに楽しめる一作でした。