京都の路地裏にあるイタリアンで、出てくる料理がどれも美味しそう。
鱧のアクアパッツァとか万願寺とうがらしのカルツォーネとか、京食材とイタリアンの組み合わせのセンスが最高で、読んでるだけでお腹が鳴ってくる。
それに、店主さんの飄々とした京都弁のキャラクターが魅力的。
ただの料理小説じゃなくて、疫病神や座敷童子みたいな不思議(あやかし)が自然と集まってくるファンタジー要素がワクワクする。
お客さんたちのリアルな日常の悩みや疲れが、店主さんの美味しいご飯とちょっとしたお節介で綺麗に解きほぐされていく展開に、心が温まるお気に入りのお話です。
イタリアンと和の要素が織り交ぜられ、各話のタイトルがすべて料理名で構成されているのがとてもおしゃれ。タイトルだけでは内容が想像できませんが、それがむしろ「どんな物語だろう」とページをめくる楽しさにつながっています。
料理の描写はくどくなく、それでいてしっかり美味しさが伝わってきて、読んでいるだけで「食べたい」と思わせてくれるのが魅力です。お腹すいた。
オムニバス形式なのでどこからでも読めるのも嬉しいポイント。私はリゾットが好きなので、1話→2話→10話と「松茸と鱧のリゾット」へいきなり飛んでしまいましたが、それでも自然に作品の空気に入り込めました。
丁寧な文体と、語りすぎないことで生まれる余韻。そのバランスがとても心地よく、気づけば物語の中の食堂にいるような感覚になります。
働いたり勉強したり、少し疲れた日にふらりと立ち寄りたくなる場所。
そんなやさしい時間をくれる作品です。