決められたあらすじに沿って物語を書き、その筆致の違いを楽しむという企画への参加作品。
タイトルは「嘘と桜とレモネード」であること、桜の咲く頃に春香は出てゆき、颯太はとどまる。
こんな概要のお題ですが、まさかのハードボイルド×ノワール×ブロマンス。
お耽美な風まで吹くとは思いませんでした。
感服。
腐女子も歓喜。
ある「ヘマ」のせいで命を諦めようとした颯太、通称「春香」に消されるつもりで覚悟を決めたはずが、予想外の春香の行動から、結末は別の血なまぐさいものとなります。
ハードボイルドの疾走感とダークさの一方、はらりはらりと散る桜の回想や、白い顎に滴る血は妙に美しい。
そしてラストの、颯太のある気づき。
最終行は本作の魅力そのもの。
なまぐさい血が、妙に美しい。
同一あらすじ、同一登場人物、同一タイトルで書いてみる。そんな自主企画向けの作品であることを念頭に置いたとき、短時間でこのように書き上げる方はなかなかいないのではないでしょうか。少なくともあの自主企画のレギュレーションを読んで、こういう方向に仕上げようとは、私は思いもしませんでした。
発想をどこまでのびやかに広げることができるか。展開をどこまで深く掘り下げることができるか。制限があるからこそ力量が問われる。そんな企画に真正面から斬り込んだ本作は、正直脱帽です。
ここにあるのは、創作への飽くなき情熱と、臨界点まで昇華した制限。
構想力とそれを仕上げる力量があれば、どうとでも作品にしてみせる。そんな作者の意気込みを感じる作品です。