決められたあらすじに沿って物語を書き、その筆致の違いを楽しむという企画への参加作品。
春香と颯太がレモネードを前にして、再会と別れの物語を繰り広げるというのが、お題の簡単な趣旨になります。
> 「春香ってさ、俺の中では、なんか秋のイメージあるんだよな」
>「でも春香っぽい本だったよ。静かな話なのに、ずっと残っていく感じ」
愛おしい、あなたの事が大切だ。
そんなふうにひとことも書かれないのに、颯太が春香にかける言葉には、春香への愛おしさと、でも近づききれない切なさが滲んでいます。
久しぶりに会った恋人になりきれないふたりの、ささかやかな会話、そして別れ。
そんな甘く切ないひとときがひっそりと描かれた静かな短編、のように思えましたが、ラストに春香の真実が明かされ、この企画のお題が伏線となって、回収されてゆきます。
1度目は颯太の気持ちになって、2度目は春香の気持ちになって。2度味わいたい、美しい作品でした。