第20話 追憶(18)ようやく……レベル5!
「うーん!、、、、うーん!、、、、」
俺は今、全力で魔草を引っ張っている。
今朝から二回目のチャレンジだ。
手ごたえはある。
「残り15秒よ」
師匠の声が聞こえた。
「うーん!、、、、うーん!、、、、」
息を止めているから顔は真っ赤になっているはず。
「残り10秒」
「9秒」
「8秒」
ズッ
ズレた!これまで抵抗を続けてきた魔草が、明らかに動いた!
「7秒」
よしっ!!!
「6秒」
ズルッズルッ
大きく魔草が抜け始める。根が地上に現れる。ちらりと視線を向けると、見た感じは普通の草の根っこだ。
それでも少し絡み合ったような根は、「抜かれてなるものか!」と頑張っているように見えた。
「5秒」
「4秒」
スポッ
そして――地面に必死にしがみついてた魔草は、突然諦めたかのように、ズルリと長い根が地上に姿を現した。
「あっ」
その抵抗のなさに、俺は思わず尻もちをついていた。ジュワンとした感覚が俺の身を覆う。
(レベルアップだ!)
「ダッシュよ!!!」
だが、その喜びも束の間、師匠の叫び声が聞こえた。
「急いで!」
慌てて俺は、抜けた魔草を手に掴んで、師匠の下へと駆け出した。
■□■□
「ぬ、抜けました!! 師匠、やりました!!」
息を止めている時間が長かったせいか、はぁはぁしながら俺は、魔草を握ったまま師匠の前で地面に仰向けで寝ころんでいた。
「よく頑張ったわね」
師匠の嬉しそうな声を聞いた俺は、達成感に包まれていた。
まあ、20日をかけてようやく1本の魔草が抜けただけなんだが……
それでも、前進できたことは確かだったから嬉しい。
その時……握っていた魔草が音も立てずに消えていった。
「あ!」
「魔草も魔物で、ここはダンジョンだから。倒した魔物はしばらくすると消えていくわ」
なるほど。ダンジョン内では魔物は消えてしまう、ということか。
「息が落ち着いたら、ステータスを確認してごらんなさい」
「は、はい」
そして、たっぷり5分は休んでから俺は、起き上がると師匠にも見えるように手を上げて「ステータスオープン」と声を上げた。
「あら? 呪文なんて必要だったかしら?」
不思議そうな顔で俺を見る師匠。
「雰囲気です……」
ちょっと恥ずかしい。
それでも――
名前:ルイ
種別:人族(異世人)
年齢:7歳
性別:男
職業:■■■■
レベル:5
攻撃力:5
魔力 :5
防御力:5
精神力:5
運 :5
スキル:ぷらすわん
おお!
レベルを含めて、全てのステータスが1上がっている!
確か魔草は、低レベルの時に1万本抜いて、ようやくレベルが1あがるかどうか、と言っていたはず。ということは、間違いなく、「ぷらすわん」のスキルの効果だ。
「師匠、上がっています! 全部1が足されて、5になりました!」
「ふふふ。本当ね。おめでとう」
師匠の「おめでとう」の言葉が、俺の心にじんわりと温かい何かを広がらせてくれた。
長かった。
魔草抜きと学習に、ひたすらチャレンジし続けた20日がようやく報われた。
俺は満足感に包まれていた――――
■□■□
21日目。
俺は、赤い輪を手にして、再び魔草抜きチャレンジに取り組んでいる。
昨日の感動はどこにいった?
まあ、夜、就寝前に師匠から「レベル5ね」と言われて、冷静になったから仕方がない。
よく考えてみれば、「もうレベル5」ではない。「ようやくレベル5」なのだから。
師匠からは、「喜んでいいが、あまり喜びすぎると反復して続ける必要がある地道な作業が苦に思えてしまうようになるわよ」とも言われた。
喜んでいいから、切り替えはしっかり行うように、とのことだった。
確か、この世界の人たちはレベルが1上がると、ステータスが平均で10~20の間、上がると言っていた。ということは、俺のレベルは、この世界のレベル1の人より低い。せいぜいレベル0.5といったところか。
ぬか喜びをしてはいけないことを、俺は肝に命じて置いた。
それと、一つだけ嬉しかったのは、「運」のこと。
「攻撃力」「魔力」「防御力」「精神力」は、この世界の人々は、レベルが1上がるたびに平均で10から20が増える。
それに対して「運」の項目は、レベルアップで上がらないことの方が多い。レベル100で「運」の目安は「5」ぐらいが普通、ということだった。
ということは、今の俺は「運」だけは、レベル100の人に追いついたことになる。
ただ、「運」がどれだけ生活や戦闘の役に立つのかは師匠も分からないらしい。
まあ、あまり期待せずに様子を見ておこう。
そして――――
昨日の「初、魔草抜き」に至るまでの期間は20日。
当初の最短の予定よりも数日遅かったけれど、師匠は気にしなくていい、と言ってくれた。魔草にも個体差があるから、粘る個体もいるらしいので。
次のレベル6に向けた今日からの目標は、1日早い19日目。
次回もまだ20日だと思うわよ、と師匠が言っていたから、1日でも短くなれば御の字か。
同時に他の新しい目標も師匠から提示された。
それはレベル10。
そこに到達すれば、新しいスキルが生える。
そのスキルが「ひらがなスキル」になるかどうかは分からない。ただ、ひらがなスキルは基本、生活スキルが多いので、できれば普通のスキルでいいから、戦闘や防御に役立つスキルが欲しい。
師匠からは、目標のレベル1,000到達で、「ぷらすわん」の効果もあるだろうから、スキルが全部で51回生えてくるのじゃないかしら?と言われている。
そして、できれば「収納」「鑑定」「偽装」「治癒」といったスキルが生えるように頑張りなさい、とも言われた。それらのスキルがあると、生活していくのに困らなくなるそうだ。
新しく生えるスキルは、基本的にランダムらしいが、例えば剣の修行に勤しんでいる人は剣に関するスキルが生えやすいらしい。
だから、まずは「剣術」のスキルが手に入りやすくなるよう、今は午後の授業に一コマ、剣を振る時間が加わることになった。
予定では、1レベルアップごとに1日ずつ短縮されることになっているから――あくまで、師匠が考える予定だが――レベル10に到達する目標は、おおよそ90日後となる。約3か月だ。
頑張ろう。
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