高校時代から「不要物」と呼ばれ、看護師になっても置いて行かれ、推しの結婚報告でひっそり泣く第1話の藍琉の孤独の描き方が丁寧で、派手な悲劇ではなく日常のじわじわとした疎外感として積み重ねられているのが良い。「壊れてはいないけれどいらない、それが不要物」という定義が、彼自身の言葉として深く刺さる。
その上で、復讐でも見返すためでもなく「誰かの傍にいたい」という願いでスイッチが入る構造は、ありきたりな最強系異世界ものとは芯の部分が違う。パンデミックの記憶を持つ元看護師が、怪獣感染症が蔓延する新世界ソーマティカで戦う設定には現代へのリアルな視座が感じられ、単純なバトルファンタジーには収まらない厚みがある。
「言霊」が力を持つ設定や、虚数界からの侵略者、群像劇の仲間たちと、世界観の密度は高め。42話・13万字とすでに読み応えがあり、エンターブレインの長編コンテストに応募中というのも納得の完成度だ。王道ヒーローものが好きな人に、まず第0話と第1話だけでも読んでみてほしい一作。
看護師として働く藍琉(あいりゅう)が痛みを抱えながら異世界転移して始まる物語は、新世界『ソーマティカ』の説明によって少しずつ立ち上がっていきます。
とはいえ序盤から動きがあり、異世界の雰囲気をどっぷりと楽しくことができる。
そして藍琉は出会いを通じて使命を見出していくのですが、とにかく世界観が独特で、圧倒されながら読み進めていました。
説明が的確なので読んでて迷子になることもなく、自然体で物語の世界に浸ることができました。
戦火の光景は凄絶で迫るものがあり、戦場の感染症の描写はただのSFにとどまらない現代への示唆を感じたものです。
やがて「言葉」が力を持つことになり、物語がいっそうの深みを増していく。
物語もまた「言葉」によって紡がれるものであるゆえ、不思議な説得力を感じました。
第7話節までの感想ではありますが、先行きがとても気になるため、引き続き楽しみにしながら展開を追いたいと思います。
どんな時でも、ヒーローというものは我々の心を掴んで離さない。人知を超えた強大な敵に立ち向かい、時には身勝手な人々の偏見や非難に苦しみながらも、愛と平和、そして誰かの為に戦う姿はカッコイイものだ。
本作の主人公の藍琉も、まさにそんな感じだ。前世は人々から『なんとなく』で理由もなく除け者にされ、不遇な毎日を送っていた彼。だが、それでも彼は不貞腐れたり闇堕ちしたりしなかった。異世界(?)に飛ばされた後も、得たヒーローとしての力を人の為に使う。それは、前世の看護師としての仕事柄なのか。それとも、本人の元からの性格なのか。どちらにせよ、痛みを背負って戦うヒーローの姿はカッコイイ。
異次元から迫りくる怪物達との激戦が光る深い闇と確かな光を併せ持った良作。