第4話 「あたし、ちゃんと国語教師になれるのでしょうか?」


 聖女ジャンヌ・ダルク大学の敷地内である。


 正門からキャンパスを見ると、緩やかな坂を上がった両側に講義棟がある。

 坂を上がった丘の上には「聖女ジャンヌ・ダルクさま」を祀っている教会が見える。

 聖女ジャンヌ・ダルク教会である。


 学校法人「マリー・クレメンス学園」の創立記念として開校した一般大学であり、カトリック教の教えを広める目的はない。

 だから、この教会で熱心に祈りを捧げる大学生は、とても珍しいだろう。




       *




 教会の礼拝堂、最前列の教会椅子に、一人の女子が祈りを捧げている。

 新子あたらしトモカ、この物語の主人公である。


 救国の聖女と呼ばれた聖女ジャンヌ・ダルクさまの像に向かって、彼女は目を閉じて一心に祈りを捧げている。

 ステンドグラスからは朝の太陽の光が、教会内を優しく照らしてくれている。

 新子トモカにも、その優しい光が当たっている。


 胸の前で両手を組み、新子トモカの口が開く。

「ああ、聖女ジャンヌ・ダルクさま……。あたしは、どうすれば……。どうか、教育実習の単位が無事に取得できますように……」

 いつものように、学業に関する切実な懇願である。

「あたし、ちゃんと国語教師になれるのでしょうか?」

 それを、聖女さまに尋ねても仕方がない……。

「……めちゃんこに、プレッシャーです」

 アラレ語を出してしまうということは、彼女の切実な気持ちを表している。


 教会内には彼女の他に誰もいない。

 新子トモカは目を開けて、一心に祈りを捧げ続ける。

「ああ、聖女ジャンヌ・ダルクさま……。あたしは、どうすれば……ユウタと、上手くやっていけるのでしょうか」

 今度は恋愛相談だ……。

 それを、聖女さまに尋ねても自分たちの問題であるのだが……。




       *




 新子トモカが、教会椅子から立ち上がった。

「んじゃ、聖女さま! あたしは講義を受けに行ってきます!」

 肩にカバンを掛けると、

「ばいちゃ!」

 元気良く、聖女ジャンヌ・ダルクさまの像に手を振った。


 新子トモカは、扉に向かって歩き出す。

 教会内には彼女の足音だけが木霊こだましている。


 その音は、次第に小さくなっていく――。


 静寂が教会内を包み込んでいる。

 張り詰めた空気、清き祈りの空間である。


 魔女から聖女へ――

 

 屈辱の蔑称を付けられ、忌み嫌われながら火刑に処されてから、数百年がった。

 聖女ジャンヌ・ダルクさまの像は、ただの石像である。

 もちろん、何も言わない……。





 続く


 この物語は、ジャンヌ・ダルクのエピソードを参考にしたフィクションです。

 執筆には発想整理の補助としてAIを一部利用していますが、意図と表現は作者によるものです。


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