膝が折れた日から、祈りが始まる(ほしわた)
ほしわた氏の最新連載で、これまでの全作品とは明らかに文体の質感が違う。「蜂つきわたあめ」や「河川で見かけた少女」の繊細な感覚描写が、少女×ロボットという大きな器に入っている。
第1話の冒頭——決勝戦で膝が「パキッ」と折れる瞬間の描写が圧倒的だ。竹刀が床を叩く音よりも薄く、もっと残酷な音。次の瞬間には夢が止まる——この一点の描き方が、物語全体の核を第1話で確立している。
弟・武の「笑わせ作戦」と下駄箱への激突、小夜の「銀色で寂しい味」という共感覚的な言葉、そして祠で出会う宙璃姫——不思議と現実の温度を両立させる第1話の設計は、ほしわた氏の短編で磨かれてきた「日常と異常の境界を丁寧に歩く」技術の結晶だ。
「触れた瞬間、膝の奥にこびりついていた鈍い痛みが、すうっとほどけて消えた」——その全能感には「残酷な値段」があると概要が告げる。勝つたびに世界が壊れていく代償の構造が、第25回角川ビーンズ小説大賞応募作として本格的なテーマを背負っている。
連載中17話・5万6千字。ほしわた氏の全作品の中で、最も「次の一手」が見えない——いい意味で。
怪我で夢を断たれた少女、薫の喪失感は、やがて出会うロボット「ユズハ」によって癒しと救済へ。
五人の子どもたちが、秩序の崩壊や物理的数値と必死で向き合っていく姿は独創的かつ新鮮で、物語の世界観は五人が持つ熱気と共にヒートアップしていきます。
よく練られた構成も見事なものですが、個人的に惹かれたのは、五人が胸に抱く想いと信じる気持ちです。
祈りとは、いにしえより自然的な万物を通すイメージがあるものですが、本作においてはまさに人間が持つ感情に焦点を当てることで、祈りが持つ本当の力をひしと感じることとなりました。
そのためにはやはり機械的象徴であるロボット「祈機(いのき)」の存在が不可欠であり、対比によって浮かび上がる感情が、作者様によって選び抜かれた色と音の表現によって、読者の胸を打つエネルギーへと変換されている。
魅力的なタイトルとあらすじだけでは追えない密度の濃い世界が、クリックをしたその先に待ってます。
作者様が全力で駆け抜けた文体のドライブ感を、ぜひ多くの人に味わってもらいたい。
そんな祈りを抱きたくなるエネルギッシュで深みのある物語です。