Archive_6【縮毛矯正】
発生地:不明
形式:匿名掲示板上での収集
この話をしても信じてもらえないかもしれません。
でも、自分の中でずっと引っかかっていることなので、ここに書きます。
私は子どもの頃から癖毛でした。梅雨になると髪が膨らんで広がるし、体育の後なんてもう鏡を見るのも嫌になるくらい。
小学生の時からずっとからかわれてきました。「もじゃもじゃ」とか「ライオンみたい」とか。
当時は本当に恥ずかしくて、写真に写るのも嫌でした。
高校に入ってからもそれは続いて、ストレートの同級生を見るたびに、自分とは違うんだなと思わされました。だから大学生になった頃、バイト代を貯めて、やっと縮毛矯正をかけたんです。
それが違和感の始まりでした。
最初の感想は「こんなに楽なんだ」でした。
毎朝のブローに時間をかけなくていいし、雨の日でも堂々と外を歩ける。
周りの人の反応も変わりました。バイト先で「髪綺麗になったね」と声をかけられたり、友達に「イメチェンした?」と笑顔で言われたり。
最初は「やっぱり見た目って大事なんだな」と単純に思っていました。
でも、だんだん違和感が出てきました。
ある日、幼馴染と遊んだときに「お前って昔から髪綺麗だったよな」って言われたんです。
私は深く考えずに笑って誤魔化しました。
でも、ずっともじゃもじゃの髪で悩んできたのに、「昔から綺麗だった」なんて言葉は出てくるはずがない。
けれどその子は本気でそう言っている顔をしていました。
そしてある日、実家でアルバムを見た時にその違和感は確信に変わりました。
小学校の入学式も、運動会も、修学旅行の集合写真も。全部ストレートの髪型になっているんです。
写真の中の私は、きちんと整えられた真っ直ぐな髪で笑っていました。
確かにあったはずのからかわれた日々。泣きながら鏡を見つめた夜。アイロンで髪を焼いてしまって煙が立ったこと。そういう記憶は鮮明に残っている。
だけど周りは誰も覚えていないし、証拠も残っていない。
「記憶違いかな」と思おうとしました。でも、違うんです。
親も、友達も、幼馴染も覚えていませんが、私の記憶には確かに残っているんです。
この間、美容室に行きました。
縮毛矯正の掛け直しは美容師さんに不要と言われ、実際うねりも出ないので長らくかけていません。
その日はカットだけをしに行きました。
施術が終わり、ふと切り落とされた私の髪の毛を見ました。
すると、床に散らばっていた毛束は、すべてうねっていたんです。
そして、少しだけモゾモゾと動いている。
美容師さんはそれを気にする様子もなく箒でその髪を集めて、ゴミ袋に入れていきます。私はそれを黙って見ていました。
あのとき、自分の一部が捨てられていくのを見ている気がしました。
それからずっと、自分が誰なのかがわからなくなっています。
見た目だけでなく性格も変わった気がします。味の好みも変わった気がします。これは単に大人になったということなのでしょうか、それとも癖毛と共にどこかに置いてきてしまったのでしょうか
あの頃の私って私の中に残っているのでしょうか
確かに今は生きやすいです。人から笑われることもなくなったし、毎日が少しだけ楽になっている。戻りたいなんて思った事はありません。
すみません。初めから全部私の思い違いだったのかもしれません。
私は初めからストレートで、癖毛だった頃の自分なんてものはもともと居ないんです。
だって、もし私の記憶が本当だったとしたら、癖毛だった頃の自分はどこに行ってしまったというんですか?
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