Archive_5【シュレッダー】


発生地:東京都 銀座

形式:口述証言(提供者Oさん)


私が新卒で入社した会社で体験した話です。




その会社は社員数500人ほど。中小企業というには少し大きく、かといって上場もしていない微妙な規模の会社でした。

総務部は定時で帰る人が多く、私もほとんどの日は定時退社でした。


ある日、いつものようにシュレッダーの袋を交換し、床に散らばった紙屑を指で集めていたとき、妙な紙片を見つけました。


それは真っ黒な紙でした。印刷で黒くしたのではなく、紙そのものが黒く、画用紙くらいの厚みがあります。

うちで使う紙は普通のコピー用紙だけ。不思議に思いましたが、そのときは気にせず拾い上げ袋を縛って捨てました。


それからというもの、一度気づくと気になってしまうようで、定期的にその黒い紙片が混じっていることがわかりました。


入社して一年ほど経ち、残業が増えてきた頃のこと。

その日も21時過ぎに退勤し、駅に着いたところで、自席にスマホを忘れたのに気づきました。


いつもとは違う通用口から会社に入ると、役員会議室に明かりが見えました。

曇りガラス越しで中は見えませんが、数人の影と、ゆらゆら揺れる蝋燭のような光。


ただならぬ気配に、隣の会議室へ入り、壁に耳を当てました。


社長の声が聞こえます。

「…さん…りさん…次の…誰にしましょう」


それは会議ではありませんでした。

……役員たちが集まって、コックリさんをしている。


高校生がやるならまだしも50歳も過ぎた大人たちが集まって、大真面目にコックリさんをしているとしたらかなり異常な光景です。


その時気づいたのです。


もしかしたら、シュレッダーに入っていたあの真っ黒な紙片はコックリさんに使用したものだったのかもしれません。


その後も人事や競合他社のことを尋ねているようなやり取りが続き、私はなぜか二時間も聞き入っていました。


やがて、誰かが問いました。

「最後に、この儀式は成功ですか?」


しばしの沈黙。ざわめく気配。

「それはなぜですか?」


そして、はっきりとした声が答えました。

「今も、その者は聞き耳を立てていますか?」


足が固まり、呼吸が浅くなる。


「その聞き耳を立てている者の名前は何ですか?」


そこで我に返り、私は逃げるように会社を飛び出しました。

その数日後、私は退職しました。


もしあのとき、本当に私の名前が出ていたら……

コックリさんだけでなく、会社ぐるみで呪術めいたことをしていたのだとしたら……


今こうして話すこともできなかったかもしれません。

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