第34章 同化


「(同化)」


ハーランはその巨大なモンスターを見て凍りついた。指先一本動かせず、目さえもその怪物に釘付けになっていた。


「くそ……動け、俺の体……」


トカゲ型モンスターは白く輝く目でハーランを見つめると、にやりと笑った。ハーランは戦慄した。あの笑みは、10年経っても全く変わっていなかった。


「あんたか……あんたが俺の娘マヤを……! 必ず代償を払わせてやる、このクソ野郎!」


激しい怒りに飲み込まれ、ハーランは突然体を動かせるようになった。彼は素早く弾を装填してボルトを操作し、モンスターに向かって駆け出した。


「はああっ!」


「ハーランさん、無茶をするな!」


アクシアの警告など耳に入らなかった。10年間抑え続けた憎悪の炎が爆発し、ハーランの行動はあまりにも無謀だった。


モンスターはさらに大きく笑い、尾を振り上げた。しかしアクシアが猛烈な速度でハーランに駆け寄り、間一髪で彼を掴んで引き戻した。


アクシアは両手で尾の攻撃を受け止めたが、二人は光る植物の生えた洞窟の壁に激しく叩きつけられた。


ハーランは咳き込みながらも無事だったが、アクシアの両手は激しく震え、顔には痛みを堪える表情が浮かんでいた。


「アクシア! お前……!?」


「爺さん……無茶はしないでくれ……」


「……す、すまん……感情に流されてしまった……あのモンスター……あいつが俺の娘を奪ったんだ」


ハーランが言った。


「そうだったのか……道理で……でも、怒りは抑えてくれ」


「……」


間もなくキオがアクシアのライフルを持って飛んできた。


「ありがとう、キオ」


「クンバチ!?」


「ああ。奴は俺の相棒であり、友人だ」


「そんな挨拶してる場合じゃない! アクシア、エイミーの反応を感じるぞ!」


「話せるのか!?」


「どこだ!?」


「このモンスターの中だ。ちょうど胸のあたり」


「なに!?」


ハーランが叫んだ。


突然アクシアがハーランの腕を掴んで引き寄せた。ハーランは驚いたが、すぐに理由を理解した。モンスターが這い寄ってきたからだ。


「あの巨体でまだ動けるのか?」


アクシアが言った。


「本当に化け物だ」


アクシアは振り返り、二発連続で射撃したが、弾は跳ね返された。


「硬すぎる!」


続いてハーランが振り向き、ライフルを撃った。弾は確かに命中したが、ほとんど効果はなく、モンスターは依然として二人を追い続けていた。


「ちっ! どうやったらこいつを倒せる!?」


「鱗の硬度が段違いだ。もっと硬い弾が必要だ!」


キオが叫んだ。


「何かアイデアはあるか?」


「アクシア、テネブリウムを使うしかない!」


「テネブリウム……? わかった!」


「よし! ハーランさん、モンスターの注意を引いてくれ!」


アクシアが言った。


「何か策があるのか?」


「ああ! キオがお前を援護するから急げ!」


「ちっ! 好きにしろ!」


ハーランはトカゲ型モンスターの頭部目がけてライフルを連射した。しかしそれは一瞬止める程度の効果しかなかった。


一方、アクシアは光る蔓植物が生い茂る壁際へ走った。そして先ほどキオに言われた言葉を思い返した。


冷たくて心地よい感覚を感じろ。その感覚を使って体内のテネブリウムを制御するんだ。


ハーランは半ば必死にモンスターの攻撃を凌いでいた。モンスターは彼を本気で殺そうとはせず、まるでおもちゃのように弄んでいた。


ハーランの射撃が効果を発揮しない中、モンスターが尾で攻撃を仕掛けた瞬間、キオがハーランの体を抱え上げて位置を変えた。


「このクソ野郎、完全に遊んでやがる!」


「……知能を与えられた生き物は、往々にして傲慢になる……だが怯えるな、ハーラン! アクシアが制御し終わるまで耐えてくれ!」


「アクシアの奴、何も知らないくせに!」


しかし突然、モンスターの動きが攻撃的になった。ハーランの横を這い回り、爪を振り上げて飛びかかってきたが、キオの素早い動きでかろうじて避けられた。


「危なかった!」


「まだ終わってないぞ!」


キオが言った。


だがモンスターはハーランに息つく暇を与えなかった。突然動きを止め、二足で直立した。そして体が徐々に輝き、口から可燃性のガスを噴き出して炎の息吹を吐いた。


「なっ!?」


「おいクンバチ、早く避けろ!」


「黙れ、爺さん!」


キオは全力で翼をはためかせ、左右に激しく動きながら炎の噴射を回避した。


噴射が止まった瞬間、モンスターは跳躍してハーランとキオをまとめて壁に叩きつけた。


ハーランは血を吐きながら咳き込んだ。彼が見上げると、モンスターが大きく笑っていた。


「くそ……ここまでか……?」


「いや……アクシアの準備ができた」


モンスターが突然アクシアの方を向いた。危険な気配を感じ取り、素早い動きで這い寄ってきた。


アクシアは整った呼吸を続けていたが、冷や汗をかいていた。彼が目を開けると、黒い瞳に白灰色の模様が混じり、瞳孔には光る白い三角形のシンボルが浮かんでいた。


指先が震え、彼はライフルを掴んだ。すると黒い物質が溢れ出し、ライフル全体を覆い始めた。五つの弾倉から弾を装填し、硬化させて新たな形状を形成した。


「同化、完了!」


モンスターはすでにアクシアの間近まで迫っていた。口いっぱいに可燃ガスを溜め、噴射しようとしていた。


しかしアクシアはボルトを操作して引き金を引いた。白い火花が銃口から溢れ、黒い弾丸が高速でモンスターに向かって飛んだ。硬い外殻を粉砕し、モンスターの動きを止めた。


「あのモンスターを止められた……!?」


ハーランが驚愕した。


アクシアは再びボルトを操作した。冷たい気配を完全に制御できている。キオとの共鳴時とは全く違う感覚だった。今は自分で操れる。


「エイミー……今度こそ、お前を救う……もう少し長く生きてくれ」


アクシアは軽やかな足取りで前方へ飛び出し、尾の攻撃と爪を巧みに回避した。


モンスターも素早い動きで応戦し、跳躍しながら強力な炎の息を吐いた。勢いが強すぎて自身の体が後ろに押し出されるほどだった。


しかしアクシアはライフルを向け、引き金を引いた。


バンッ!


黒い弾丸が炎の息吹を真っ二つに切り裂き、モンスターの顎を貫通した。


アクシアは跳躍した。鋭い銃身の一薙ぎで、モンスターの胸を深く切り裂いた。そしてその中に――


「エイミー!」


彼は左の手でエイミーの手を掴み、怪物の中から引きずり出した。


「凄まじい力だ……あれが噂のストルムか?」


ハーランが遠くから言った。


「違う……あれはストルムじゃない……」


「じゃあ何だ? ストルム以外に考えられないだろう!」


「へへ……地上の者たちには理解できない何か、ってところかな」


アクシアがエイミーの体を完全に引き出した瞬間、モンスターは崩れ落ちながら凄まじい咆哮を上げた。


「エイミー……」


倒れたはずのトカゲ型モンスターが、再び立ち上がった。胸に大きな穴が開いているのに、背筋を伸ばして静かに立っていた。


「ガスの臭いがする……これはどういうことだ!?」


ハーランが叫んだ。


アクシアは素早くハーランの元へ駆け寄り、エイミーを彼に預けた。


「ハーランさん、早くこの洞窟から出てください」


「なぜだ?」


「このモンスター……自分ごと俺たちを生き埋めにするつもりみたいだ」


アクシアは冷静に言った。


「待て、何だと!? なら急がないと!」


ハーランはエイミーを両手でおんぶして出口へ向かって走り出した。


「アクシア、何を待ってるんだ! 早く来い!」


「僕はこいつを止める」


「どういう意味だ!?」


「二人で逃げても爆発から逃れられる保証はない。だから僕が被害を最小限に抑える」


「馬鹿なことを言うな!」


「アクシアの言う通りだ、爺さん。心配するな。アクシアは僕と一緒なら大丈夫だ。早く行け」


キオが言った。


ハーランは一瞬黙ったが、結局エイミーを抱えて出口へ走り去った。


キオがアクシアの肩に止まった。


「今の感覚はどうだ、アクシア?」


「……夢を見ているみたいだ。それに、懐かしい声がずっと聞こえる……」


「そうか……ということは、お前は再び制御することに成功したな」


「再び……? また過去の話か。早く思い出したいな~」


アクシアが言った。


洞窟内にガスの臭いが濃く充満し、トカゲ型モンスターは背筋を伸ばしたまま立っていた。尾から光が集まり、喉の奥へと移動していく。


「これで終わりにしよう……」


アクシアは片手でライフルを構えた。白い光が銃口の軌道に三角形のラインを描いた。そのシンボルは白い結晶のような形で、縁に黒い線が入っていた。


モンスターが可燃性の炎の息を吐き出した。濃密なガスが一瞬で大爆発を引き起こした。


アクシアは微動だにせず、静かに立っていた。彼はただ一つの動作をした――引き金を引いた。


黒い弾丸が白い三角形のシンボルを通過し、白い輝きを帯びてモンスターに直撃した。

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