回転フェイント
今日はきぜつちゃんコラボのケバブを食べるべく秋葉原へ向買った。きぜつちゃんとは昨年彗星の如く現れた投稿者で、深夜の街を歩き回って神社や遺構、レトロスペースなど訪ねつつ巨大なご飯を買って食う動画が人気を博している。ドカ盛飯と言えば漫画『ドカ食いダイスキ!望月さん』を想起する方が多いと思う。スタイルは似ているものの、きぜつちゃんは毎回町を散歩してからメインの店で大量注文し、コンビニエンスストアで追加買い出しを行うルーチンが決まっており、ドカ食いそのものより町探訪まで含めた一連の流れを楽しむ作りで、その中で提示される「エモい」風景、どの町を訪ねるのかというワクワク感、耳を掴んで放さないナレーションやオリジナルエンディングテーマまで、上質な旅番組のような楽しさがある。ドカ食い以外の武器こそがきぜつちゃんのストロングポイントかも知れない。
ゴールデンウィークはきぜつちゃんが展示及びポップアップショップを開催するとのことで、いっちょチケットを取って行くかと意気込んだが発売から十分で全て売り切れた。また、開催期間最後の一時間弱は自由入場を予定しながら初日の盛況から不可能と判断し、最後の希望も儚く消えた。勿論、贔屓のきぜつちゃんが大人気なのは嬉しく、ラッシュを避けるための決断も素晴らしい。わたしは行けなくともファンや当局に陰ながら拍手を送りたい。こういう後方腕組恋人みたいな考え方がお宅族の気持ち悪い所である。
きぜつちゃんショップの一部商品は通信販売が決まったそうで追加情報に期待しつつ、もう一つの企画である『モーゼスさんのケバブ』とのコラボレーションを目指しわたしと連れは秋葉原に降り立った。
『モーゼスさん』は電気街口を出て徒歩一分程度の好立地に建つ。中央通りの裏側でパセラの隣のペンシルビルがそうである。一階はキッチンとテイクアウトカウンター、二、三階はイートインに開かれている。モーゼスさんのケバブは元より食べ応えのある量で、ケバブライスやドリンクセット、もちもちロングポテトなど合わせると本格的な食事にも事足りる。ワンハンドグルメに見られがちなケバブにイートインスペースを設けたのは慧眼だと思う。わたしはきぜつちゃんケバブライス、連れはシャワルマを買い、奥まった公園で食べる。どちらも量が多く、コラボメニューが大きいのは想定内としても、ケンタッキーのツイスター程度と予想したシャワルマが両手で持つような太さで驚いた。連れのアドバイスに従い朝食を抜いて良かった。それでもお腹はパンパンに膨れ、日が暮れるまで何も食べる気が起きなかった。少食になったせいか内臓が弱体化したか、そもそもきぜつちゃんケバブがドカ食い用だったからかは分からない。SNSにはサンドウィッチ型のケバブを食べ切るのに苦労した話が流れていたから、きぜつケバブが常軌を逸していた可能性もある。連れは通常メニューにして良かったし、わたしは頑張ってきぜつちゃんと同じケバブを食べられたのが嬉しかった。
『モーゼスさん』はガーナから来日された、日本におけるケバブのパイオニアである。遠い日本で働く覚悟もさることながら、ケバブという新しい料理で勝負するチャレンジ精神やそれを完遂する行動力と、話を聞くだけでも感動を禁じ得ない。一方でモーゼスさんの成功にあやかろうと、関連性がないにも関わらず名前を拝借する店が少なからず見られるようで、ケバブ普及の目的や訴訟の負担を考え黙認状態になっている現状もある。公式アカウントでも注意喚起されているので一読をお勧めする。あまり露骨に二匹目のドジョウを狙うものではない。
パチモノ店のうち末広町近くの一つが廃業し、居抜きでオープンしたのが公式二号店で、連れのシャワルマはそちらで購入した。
シャワルマとは原語で回転を意味する。ドネルケバブのドネルに近く、回転する焼肉そのものを指す事もあるのでドネルケバブとほぼ変わらない。ケバブは焼肉の意である。ただし、日本においてはラップサンドに拡大解釈され、ドネルケバブと素材は同じでも形が違う食品として売られている。ケバブサンドは切れ目を入れたアラブ風パンに具を挟み、シャワルマは巻く。食べやすさで言えばロールサンドに軍配が上がるかも知れない。厳密には誤用だがジャパニーズシャワルマも悪くないし、同じ料理でも国外に出れば色々アレンジされるものだから、勘弁してもらえると嬉しい。
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