第25話 森の探索だった

 翌日。

 俺たちは森の前まで来ていた。


「ヴィンセント様。お疲れさまでした」

「ああ」


 コラールからは徒歩だ。

 歩いてだいたい2時間くらい。

 森の入り口に到着したところだ。


「といっても、これからが本番だけどな」

「再度の確認になりますが……ここから先は山歩きになりますが大丈夫ですか?」

「大丈夫だ」


 このために日々鍛えてきたんだからな。

 剣術の鍛錬をこなすために、体力づくりもしっかりやってきた。

 それを生かすときだ。

 とはいえ、山歩きを舐めてるわけじゃない。

 だからこそ、フィーリたちにもついてきてもらっているわけだし。


「騎士は、山歩きも慣れているんだったな?」


 森に踏み入る。

 獣道をトミーに先導してもらいながら歩きつつ、近くにいたフィーリに話しかけた。

 なお陣形は、先導がトミー、その次に俺、俺の背後にフィーリ。その後ろにリーゼ。最後尾にフランシスだ。


「そうですね。山狩りをするときもありますし、魔物の間引きをすることもあります」


 魔物の間引きは分かる。

 魔物討伐は冒険者がやってくれているけど、彼らは割の良くない依頼は受けてくれない。

 まあ、稼ぎが悪い仕事をやれとは言えないわな。

 やらせたばっかりに領地から逃げられたらたまらない。

 冒険者の知見を現場で借りたい場合は、ちゃんと報酬を弾んでうまい思いをさせるのが肝だ……と、俺は思っている。

 父上がどうしてるかは分からないけど、俺が政をする立場だったらそうするだろうな。

 

 そして山狩り。

 何故か?

 決まっている、盗賊の掃討だ。

 盗賊については、ファングクロー子爵領ではかなり気を遣ってる方だろう。

 でも、なかなか撲滅にはいたらない。

 倒しても倒しても、どこからともなくわいてくる。

 放っておくことなどできないので、これからもずっと、いたちごっこは続いていくのだろう。


「ヴィンセント様もついてこれていますね」

「ああ。今のところはな」


 フィーリはちらりと後ろを向いた。


「リーゼもついてこれているのは驚きです」

「聞いているかもしれないが、リーゼは槍で俺と互角の戦いをするからな」

「私が互角など……決着がつく前に終わっているからです」

「ファロウが止めるまで、決着がつかないってことだ。それが互角でなくてなんだ」

「それは……」


 現在のリーゼは、いつものメイド服だ。

 まさかここまで、その格好でついてきているとは。

 そういえば、ゲームでも彼女のビジュアルは基本的にメイド服だったな。

 外見変更ができるのは、全クリ後の追加コンテンツまで待たないといけない。

 もちろん色々と防具を着させられるんだけど、防具は外見には反映されず、ずっとメイド服。


 ……まさかここまで、原作再現とは思わんやん?

 さっきの、俺と互角であることを否定しようとする謙遜と、ここまでメイド服で来ているという強い意志は、同居しないような気がするんだ。

 俺の気のせい?

 気のせいか。

 そっかー。

 いや別に、森歩きに何も支障がないなら、別に何着ていたっていいんだけどさ。

 槍の鍛錬でも、基本的にメイド服着てやってるしな。


「そろそろここらで小休止しましょう」

「ああ」


 開けたところに出た。


「ご主人様。どうぞこちらへ」


 いつの間にか、リーゼが切り株に布を引いて椅子を用意していた。

 しかも手にはティーカップとティーポット。

 いつの間にそんなものを用意したんだ?

 てか、それどこから出した?

 ……いや待てよ。

 そういえばゲームでもあったな?

 いつの間にか、もてなしの準備がされていた。

 リーゼに聞いても「メイドですから」としか返ってこなかった、みたいなシーンが。

 これか?

 よくアニメとか漫画でも、先回りしていつの間にか用意している万能辣腕執事、みたいなのは描写されるじゃん?

 リーゼってそっち枠だったか?


「……もらうよ」


 差し出されたお茶を飲む。

 ……うまい。

 ゲームだと1文だけテキストが出て流されるやつだ。

 キャラクターの掘り下げなんてそこまで興味ないプレイヤーも多いし。

 俺だって興味なかったわけじゃないけど、それよりは育成やパーティ編成、装備構成を考える方が好きだったしなあ。


「ヴィンセント様」

「なんだ? フィーリ」

「ヴィンセント様は、どうしてこちらの森を選ばれたのですか?」


 おっと、来たか。

 俺がここに来たいと言った理由。

 誰からも特に深く聞かれるともなかった。

 ただ、ここを探検したい、という理由だけだったんだ。

 でも、フィーリは踏み込んできた。

 フィーリが鋭いのか?

 それともファロウや父上が、確認するように言ったのか?

 まあいいや。


「ここには、打ち捨てられた遺跡のようなものがあるっていうじゃないか? それを探検してみたくてな」

「遺跡、ですか」


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