ラリーが好きな人には、ぜひ読んでほしい作品です。
そして、ラリーをあまり知らない人にも、「なるほど、ラリーってこういう競技なんだ」と面白く読める力がある作品だと思いました。
本作の魅力は、ただSS(スペシャルステージ)の全開勝負だけを描いているのではなく、レッキ、ペースノート作成、リエゾン区間、TC、サービスまで含めて、ラリーという競技そのものの奥深さをしっかり物語にしているところです。ここがとても新鮮で、読んでいて引き込まれました。
特に良かったのは、レッキやリエゾン区間にまでちゃんとドラマがあること。ラリーというと、つい「速く走る場面」ばかりが見どころになりがちですが、この作品はその前後の準備や判断、積み重ねの一つひとつがきちんと面白い。だからこそ、SSに入った時の緊張感や熱さが、より強く伝わってきます。
和希と楓のコンビもとても魅力的です。ドライバーとコ・ドライバー、それぞれの役割が自然に伝わってきて、「二人で一台を走らせている」感覚がとても濃い。だからこそ、トラブルが起きた時のやり取りにもリアリティと熱があり、最後まで夢中で読めました。
それもそのはず。作者さんは、現役のコ・ドライバーさんとのことで、競技者ならではの視点、ドライバーではなくドコラさんの視点が、物語に反映されているのかなと思いました。
そして、満身創痍になりながらも走り続ける青いスイフトが本当にいい。派手すぎない車種だからこそ、この作品の泥臭さ、必死さ、そして格好よさがいっそう際立っていたように思います。
ラリーの“速さ”だけではなく、ラリーの“競技としての面白さ”そのものを味わわせてくれる作品でした。ラリーものが好きな方にはもちろん、モータースポーツ小説を読んでみたい方にもおすすめしたいです。