「首筋に突き立てられた聖銀のプラグ」という、ファンタジーでありながらどこかSF的・ディストピア的な搾取を思わせる衝撃的なモノローグから、一気に世界観に引き込まれました。
愛した男から「醜い不具合」と角を拒絶された魔女ベルローズが、同じように王都に尊厳を縛られた蒼い幻獣に出会い、その姿にかつての自分を重ねる。この「拒絶と救済」の対比が、夜の薔薇園という美しいロケーションの中で鮮烈に描き出されています。
「漆黒の髪が夜を溶かしたように」「季節外れの薄氷のように白く凍らせている」など、冷たさと美しさが同居したハイセンスな描写が散りばめられています。
血の鉄臭さと過負荷の魔力が混ざる庭園の空気感が、読者の鼻腔にまで漂ってくるかのような臨場感があります。
「その川に、春の低音は」の繊細な現代恋愛を書いた作者が、こんな質感の世界観を同時に描いているということに、まず驚く。
第1話の筆致は重厚で、霧と薔薇と聖銀の首輪が作る世界に、読者を引き込む力が最初の一文からある。「首筋に突き立てられた聖銀のプラグが、魂を数字へと変えていく」この冒頭だけで設定と痛みが同時に伝わる。
ベルローズが泥の中の幻獣に歩み寄る場面は、「その川に」とは対照的に感情が一切説明されない。「私と、同じ」というたった三文字の内省の後、そのまま行動に移す。管理の象徴である首輪への憎悪と、かつての自分への投影が、ひとつの動作に収束している。
「噛みたければ噛みなさい。私の指を食いちぎり、この喉を裂けば気が済むのなら」という台詞が、この作品の核心を一行で示している。救済でも施しでもなく、同じ傷を持つ者が同じ傷を持つ者に向ける、冷たくて対等な手つきだ。
「冷たいのに甘い」という既存レビューの言葉は正確だ。カドカワBOOKSファンタジー長編コンテスト応募中・毎日更新・61話。彩羽やよい氏の二面性を楽しむなら、「その川に」と合わせて読むのが最もいい。