普通の小説なら、起承転結、人物造形など、凝った作りにする事が望まれるかもしれない。それをしなければ、ただの雰囲気だけの書き散らしになってしまう。そういう世界もあると思いますが、本作は、行ったり来たりの揺らぎが素晴らしいと思いました。誰が良いとか悪いとかが主張されているわけではなく、その空間にいたそれぞれの思いの重なり合いが書かれている。十代の透明感だからこその色合いを感じました。
この作品に明確な「answer」はありません。それでも、言語外からこぼれ落ちるキャラクターたちの「本音」に読み手の想像も豊かに膨らみますし、何よりも言語感覚に優れている。会話劇のやり取りや言葉のリズムも滑らかで、読んでいてため息が出るほどです。この才能を埋もれさせてはもったいないと思います。本当に素晴らしいと思いました。