春の朝、駅で見かけた見知らぬ少年に強く目を奪われた主人公の遥。教室へ向かうと、なぜか昨日まで誰が座っていたか思い出せない窓際の席に、その彼が座っていました。彼が落としたノートを拾ったときに触れた指の不自然な冷たさや、使い込まれていたはずが真っ白になっているノートなど、日常に潜む些細な違和感が遥の心をざわつかせます。記憶を辿る中で唯一思い浮かぶ「光」という名前だけが、どうしても名簿の誰とも結びつかない――。
そんなミステリアスな記憶の欠落から、二人の不思議な物語は動き出します。
単なる日常の学園恋愛かと思いきや、随所に散りばめられた「記憶の違和感」が読者の好奇心を強く惹きつけます。「恋」だと思っていた感情の裏に一体どんな秘密が隠されているのか、一度ページを開けば先を読まずにはいられない圧倒的な引力を持った作品です。春の風や夜に揺れる桜を感じさせるような美しい情景描写と、どこか曖昧な輪郭を持つ彼との静かなやり取りが、切なくも瑞々しい世界観を見事に構築しています。忘れてしまった記憶の中に何が眠っているのか、少し不思議で胸が締め付けられる恋愛小説を求めている方に、全力でおすすめしたい一作です!