商店街の片隅で『パルマ総合クリニック』を営む町医者の一条院長は、いつもニコニコして、能天気なおじさん先生。けれど地元民からは絶大な信頼を集めている。軽い症状で訪れる患者たちのなかには、ときに深刻な病が潜んでいることも……。些細な手がかりから隠された病名を探っていく医療ミステリーです。
医療小説でミステリーと聞くと難しそうな印象がありますが、本作は短編形式で、とにかく読みやすいんですよ。一話につき一人ずつ患者の症状を解き明かしていくスピーディな構成で、「その症状、そんな病気だったの!?」と予想外な真相に驚かされます。
患者の症状は、一見するとただの咳や腰痛、肥満、過労、虫さされ、目の充血……。どれもこれも病院に通わずとも治るものではと思いきや、それが心臓病や脳疾患、臓器不全などの致命的な異常を知らせる危険信号だったりするから怖いんですよ。
そして何より魅力なのが、一条院長の人柄です。鋭い診察力はもちろんですが、患者の悩みに真摯に寄り添い、不安や訴えに耳を傾ける姿に安堵を覚えます。医者とは、患者の命だけでなく心を救うこと。そんな尊さが丁寧に描かれていて、「私もこんなお医者さんに診てもらいたい」と思えました。
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=愛咲優詩)