※20※
6時前後に起きる癖がついているからか、今日も自然と目が覚める。
冒険者の朝も早いのか、俺が顔を洗ったり歯を磨いたりしている間にテントから這い出してきた冒険者がいた。トイレを済ませ、朝食の準備をするために水汲み場へ行く。男ばかりのグループだったがフルーツを持ってきていたのか、マンゴーのような黄色いフルーツを洗っていた。
不思議なところだな、と言いつつ笑いあっている彼ら。なんとなくこの場所を気に入ってもらえた気がする。
そろそろお腹が空いてきたから管理人事務所から出ていこうかと思った時、彼らが出発準備をしているのに気が付いた。5分ほどで彼らはいなくなり、SA内に残っている者はいなくなった。
「よし、新商品チェックをしよう」
一度SAを撤収し、すぐに同じ場所に出す。あっという間の早業だが、これで新商品への入れ替えと清掃、なくなったマキの補充などすべてが終わっている。
「すごいよなぁ」
落ち着いて買い物がしたいから清掃中表示をして入場ゲートをロックしてしまう。
「さぁて…なにかなぁ」
エリア内を歩きだしてすぐ、俺は違いに気が付いた。
「食事をするスペースに屋根がある!」
しかも、テーブルも椅子も昨日までの2倍になってる!
「レベルアップしたのか!」
急いで携帯端末で確認。無事レベル4になっていた。
どうやら泊っていった彼らが立ち去る前に、自販機を利用して多めに買い込んでいってくれたらしい。
「嬉しいし…ありがたい」
念願のレベルアップは食事処の変化だけではなかった。
「見慣れない建物が増えてる…」
なんだろうと思いつつ駆け寄って、気が付いた。
「シャワーブースだ!」
これは嬉しい。嬉しすぎる。もう、湯を沸かしてバケツに入れ、タオルで身体を拭かなくてもいいのだ。
「ありがとうございます!」神様、女神様!
男女それぞれにシャワーブースと脱衣所がひとつずつある。トイレと同じパターンなら、次のレベルアップでシャワーブースが増えてくれるだろう。
すぐにでもシャワーを利用してさっぱりしたいところだが、自販機も何やら増えている…気がする。
列が一つ多い気がするのだ。これを先に確認せずにはいられない。
「これか…って、コーヒーか!」
うわあ、待ちに待ったコーヒーだ。飲みたかったコーヒーだ!
新たな自販機は紙コップタイプ。早速コーヒーを購入してみたところ、断熱紙コップになっていて持っても熱くない。サイズはМぐらいで多分200から250ミリリットルぐらい。樹脂製のフタの代わりに紙製のふたが付いている。
「自分でミルクや砂糖の量が調節できないのは残念だが…贅沢は言えないな」
メニューは2種類で、ブラックコーヒーとミルクだ。俺はブラックも好きだからありがたいが、ブラックが苦手な人はミルクを買って加えるしかないな。いや、そもそもブラックコーヒーを買わなきゃいいのか。無理してブラックを飲む必要はない。
「ミルクか…あんパンの時に欲しいと思ったんだよな」
まだポケットに残っていたか? 思いつつ手探りしてみれば、ちゃんと手の中に出てくる。
「あった。でも、先に他のメニューを確認してからだな」
出来れば朝食はおにぎりがいい。
「端から順に確認していくか」
ペットボトル飲料は水、ウーロン茶、ジャスミン茶の3種類。水+2種類って感じだな。今までのところ水だけは入れ替えがない。
おにぎりはカツオと麦味噌。俺は好きだが、麦味噌か…好き嫌いが分かれそうだな。
パンはクリームパンとベーグル。ベーグルか…どう説明するかな。もちもちした触感? もちもちっで伝わるのか?
「うーん…」
しばらく悩んだものの、今日からはパン2種プラスジュース2種のセット売りをする約束だったと思いだした。つまり、パンの説明をする必要なく買ってもらえるということだ。
このセット売りになっていて、タイミングが良かったな。
紙パックジュースはフルーツミックスとフルーツオレ。今日も中身のフルーツが違うから別物だ。そして青汁。健康にいいけど、青汁は…どうするか。意外と飲みやすいと思うのだが、コルサ達も健康のために、って感じだったからなー…どうするか。
思い切って今日はパン2種類ジュース2種類のセットの組み合わせをすべて同じにしてしまおう。選択肢はないが、どれも新作ばかりだから今回はこれで我慢してもらう。隙間に入れるジュースは人気がありそうなものをチョイスしておけばいいよな。
スープは…
「お、豚汁来たーっ!」
最高に嬉しい。
「って、なんだよ。ふかひれスープまであるのか。いいのか、自販機で」
どっちにしようと少しだけ迷う。いや、迷うがやっぱり豚汁だ。俺の一押しはこいつだ。
人参入りの豆乳スープもあるけど、豚汁とふかひれスープの前では存在が薄くなってしまう。
「まずは朝食だな」
事務所には戻らず、屋根付きのテーブル席で朝食にする。豚汁とおにぎり2個をぺろりといっちゃう。まだ腹には余裕がある。ということでふかひれスープも食べることに。
「美味いー。豚汁と同じで何杯でもいけそう」
あぁ、幸せ。
はた…と気が付いたが、味覚スキルを得てからさらに食事で得る幸福感が増した気がする。
「何の役に立つんだろうって思っていたが…」
もしかして、味覚スキルは幸せに直結していた? 美味しいものを食べて幸せを感じる。そう、つまりは…味覚スキルというのは幸せをより深く感じることができるスキルなのかもしれない。
満腹になり、幸福感も得る。食べる幸せをより強く感じられるなんて…なんてありがたいんだ。
合掌。そして感謝。
「今日も美味しいものをありがとうございます」
食べるものにも飲むものにも困らず、本当に感謝しています。
最後にミルクを入れたコーヒーでほっこりしてから、管理人事務所に一度戻ることにした。シャワーを浴びるにも、タオルをとってこないといけない。着替えも必要だ。
「ああっテーブルがある!」
これまでソファはあるが、テーブルがなかったのだ。ソファ横には小さな台があるだけで…って、その台の横に一人掛けソファも増えてる。ん、室内も広がってる?
「またドアが増えてる!」
気が付けばドアの数が多い。って…ドアの奥を覗き込んですぐに分かった。
シャワー室か! なんと、管理人室にも専用のシャワーブースがあった。
「嬉しい。これでいちいち外のを使わずに済む」
シャワーブース前の脱衣所は狭いが、一人で使うのに支障はない。部屋からすっぽんぽんで移動しても誰も文句は言わないぐらいだ。
「しかも、大判タオルが用意されているし、リンスインシャンプーにボディソープもある」
ウォッシュタオルにバスマット。完璧だ。
朝からシャワーだが、かまうものか。久しぶりの入浴タイムだ。ゆっくりさせてもらう。
頭からつま先まで全身をしっかり洗ってさっぱりする。本当にさっぱりした。やはり、タオルで拭いているだけとは違う。
これからは好きな時に好きなだけシャワーが使える。ホントありがたい。
何気に鏡を見ようと洗面所に立ち、ドライヤーがあることに気が付いた。
「これも追加されたのか。助かる」
夏ならタオルドライでもいいだろうが…やはり、出来ることならきちんと髪を乾かしておきたい。
「ふぅ、さっぱりした」
髪を乾かし終え、さりげなく台の幅が広がっている元の場所にドライヤーを戻す。
顎に手をやるが、髭は伸びていない。
「そういや、あまり伸びてこないな」
この世界に来てから、あまり気にならず…またシェービングクリームもないから石鹸を使って恐る恐る髭剃りしてみた1度だけだ。髭剃りをしたのは。
「電気シェーバーを使っていたから、剃刀とか剃刀がわりのナイフとか…怖いんだよな。刃先が丸くしてあっても…うっかりやって血が出そう」
慣れてないから、怖い。
あまり気にならないから、毎日髭剃りしなくてもいいか。
せっかく全身きれいになったのだから、と制服も新しいものに変えることにした。
「ロッカーも広くなったな」
レベルアップ毎に制服が増え、ロッカーの幅も広がっていく。もう少しで中に入ることが出来そうなくらいだ。はじめはスリムなロッカーでスペースの余裕などなかった。
「うん、靴下も新しいのがあるな」
制服と同じで色もデザインも全く同じだから、着替えているとは気が付かれにくいかもしれない。
「次のレベルアップ条件を確認しておこう」
レベル4から5になるには…利用者のべ200人以上で売上6000メレ…ルか。
「人数は以前の2倍、売り上げが3倍。しかもどっちも達成しなきゃいけない…」
相変わらずきつい
「だけど…レベルが上がった時の恩恵がデカいよなぁ」
シャワールームにトイレ、ベッドルームまで完備されている。しかも、水道、光熱、宿泊費はすべてタダ。これはすごい助かる。
レベルが上がれば上がるほど便利な生活を送れる。となるとやっぱ、次のレベルアップに向けて頑張らなきゃ、な。
ギルドの販売はありがたいが、少しペースを落とすか? 結構たまってきたからお金に困らなくなってきた。欲しいものもだいたい買い揃えたし…悩む。
しかしSAを設置して、いわば訪れてきてくれた客だけを相手にして毎日を過ごす…だけというのも寂しい。何のかんのでコルサ達や爺さんたちとの交流が楽しいんだよな。
「お、もうこんな時間だ」
とりあえず、今日もギルド販売の予定が入っている。そろそろ出かけないと。
「あ、そういえば…」
レベルが4になったということは地点登録があと1つ可能になっているはず。と思ったら2つ追加可能だった。どうやらレベルが奇数の時には+1だけど偶数の時には+2個所の地点登録が可能になるという法則のようだ。いつの間にか変化しているからスキルチェックの気が抜けない。
【地点登録しますか?】
「登録する」と心の中で答えた。すると頭の中に地図が開き、その左端に地点登録ナンバーと情報が追加された。
これでコルサ達と初めて出会った場所、街道の分岐路近く、町近くの街道脇、教会へ続く坂の下、そしてここの5個所になった。町までの距離を時間に直すと、6時間、3時間、1時間、0時間、2時間になる。
登録地点の1枠は残しておこう。気が付いたらランダム転移というものが出来るようになっていたからだ。いつの間にかこの機能が増えていた。ほら、気が抜けないだろ?
このランダム転移機能だが、レベル2までが10キロ圏内という制限付き。時間も一度使えば24時間というクールタイムがあった。これさ…制限をつけておかないと連続で、しかも制限なくランダム転移ができるってことであわてて修正を加えたんだと思う。
レベル4にランクアップした時にしれっと追加情報が出てきたんだよ。
レベル4になったからランダム転移のクールタイムは12時間ですよー。制限距離は20キロですよーって。
ランダム転移というのはこれまで行ったことのない場所へ一瞬で移動できるという、便利かもしれないけれど怖い機能だ。そこがどこかも分からないのに転移するなんて、性格的に怖くてできないんだけど…?
まあ、制限付きでもそういう機能が増えたーってことだけ覚えていたらいいか、って感じだな。
通行料がもったいないのでさくっと町中に転移。管理人事務から出て、肩掛け鞄のみの身軽な状態で町の中を歩いている。
冒険者ギルドが見えるほど近くなってきたところで周囲をさりげなくチェック。近くに誰もいないことを確認して管理人事務所を狭い路地に出し…するりと移動。地点登録がない場所でもいつでもどこでも好きなところから管理事務所へ移動できるから、ホント助かる。
用意していたパン箱を4つ括り付けた背負子スタイルになってするりと戻る。
一直線にギルドへ向かい裏口から声を掛けて中へ。メローサさんの出迎えを受けて2階へ移動するのにも慣れてきた感じ。
「今日はなんだい?」
「パンはクリームパンとベーグルの2種類です」
「くりーむパン?」
あ、この町にはクリームパンはないか。カスタードクリームの作り方なんて分からないし…
「すみません、作り方が分からないんでうまく説明出来ないんですが、甘いパンです」
「甘いパンか。うん、それが分かっていればいいよ」
よかった。
「こちらのベーグルの方は柔らかくもっちりとした触感で、ほのかに甘いです」
「ほのかに甘いんだね。ジュースの方は?」
「フルーツミックスとフルーツオレですが、今日も味が違います。フルーツミックスはマンゴー、ピーチ、パイナップル。フルーツオレの方はみかん、バナナ、ミルク」
「知らないフルーツが多いが、これまでどれもおいしかったし問題はないだろう」
あははは
「とりあえず、メニュー表を用意しますね」
今日からパン2つジュース2つのセットで10メレル、1セットがひとり1つ限定となっている。流れ作業のように販売できるはずだ。
「準備はいいね? 声を掛けてくるよ」
「お願いします」
予想通り、今回の販売はめちゃくちゃ楽だった。硬貨収納箱の出番があまりないくらい、お金のやり取りがスムーズだ。というか、おつりを出すことがほとんどない。10メレル硬貨を1枚受け取って終わりのパターンがほとんどだ。
売る方にも買う方にも余裕があるから、お客さんと話す時間もあった。話すといっても基本はパンやジュースについてだ。どの味のパンが気に入ったからまた食べたい、だとか。どのジュースがめちゃくちゃ美味しかったとか…ま、一言で言えばリクエストだな。
申し訳ないが、俺には何が入荷するのか分からない…決める権限もない。なので「ありがとうございます。また持ってきますね」とあいまいな返事しかできないんだけどな。
なかにはもう少し多く買いたいから、入荷が増やせないか? というリクエストもあった。
スマイル0円とともに「検討します」と答えておいたよ。
お昼休憩を利用した戦いはあっという間に終わった。
「今日は出掛けている職員もいるから、残ったねー」
「残りましたね」
人の流れが早く途切れたからどうしたんだろうと思っていたら…そうか、ギルマスも来ていなかったな。
「すべてこちらで買い取るから、計算してもらえるかい?」
「いいんですか?」
すべてということはパンもジュースも、ってことだよね。
「もちろんだよ。ここで代理購入しておかないと、こっちが叱られるよ」
「それならいいのですが…」
「この販売方法だと、私がいなくても売りさばけそうだね」
「そうですね。メローサさんにいていただけるのはとても心強いのですが…ひとりでも大丈夫そうです」
「ジュースの方は箱の後ろに日付があるが、パンの方はどうなんだい? 翌日まで持ち越しても大丈夫かい? いや、美味しいから当日中にみんな食べちまうんだけど…聞いてみようと思って」
「2日まではまったく問題ありません。おそらく3日でも大丈夫だと思いますが、気温が高くなってきたら3日めはやめた方がいいと思います」
コンビニ販売のパンだとパンの種類にもよるが5日ほど日持ちするはず。保存料が入っているからな。だが、この世界の人に保存料の説明はできないし、こちらとしても美味しいうちに食べてもらいたいから、わざと賞味期限は短く伝えている。
「なるほど。…いや、こんなことを聞いたのは数を増やしてもらえないかと思ってね。毎日来てもらうのも…ほらそっちにとっても大変だろうし、今の倍くらいを持ってきてもらえたら2日に一度の頻度でもいけるんじゃないかと思って…卸はできないと言われただろう?」
「はい。そろそろ明日ぐらいにお休みをいただこうかと思ってました」
「そうかい…明日は休みかい」
あ、がっかりされた。
「数を倍にするのも難しいですね。パンのみにするかジュースのみにするかどちらかでいいなら、ジュースは確実に2倍行けますけど…」
「ジュースは日持ちするしありがたいが…パンも他にはない美味しさだからねぇ」
どちらか1つにする案は流れたな。
どちらか、一つだけ…?
あ、そうだ。数を増やす簡単な方法があるじゃないか。いつもやっている管理人事務所に取りに行くあれを2回繰り返せばいいんだ。なんだ、難しく考えすぎてた。
「逆にご提案なんですが…昼前だけの搬入でなく午前中に一度来て荷物を置かせていただき、もう一度荷物を運んできてから販売ということは可能ですか?」
「もちろんだよ! それが出来るならありがたいよ」
そか、こんな簡単なことで良かったのか。
「普段この部屋は使っていないし、スペアキーを渡しておくから使っておくれ。荷物を置いたまま離れるのは不安だろう」
「いいんですか?」
部屋の鍵を預かるなんて。
「ああ。この部屋の出入りのためだけのカギだからね。だが、持ち込むものはくれぐれも飲食物だけにしておくれよ。変なものを持ち込んでいるのが分かったら…身の破滅を覚悟するんだよ」
おぉ、怖わ。こわ。
「もちろん、パンやジュースのみにしますよ」
と言った端から、こんな質問をすするのはあれだが…
「パンとジュース以外に暖かいスープをお持ちしたら、売れる可能性はありますか?」
「暖かいスープだって?」
「はい。数は多分5人分とか6人分の少しだけになると思いますが…」
おにぎりは…食べてもらえばそのうまさは分かると思うがやめておこう。コーヒーもおススメなんだが、あれを持ち運ぶのは大変だ。専用のものでもないと倒れる危険がある。スープなら少しぐらい持ってこれる。容器には安定感がある。
「気になるねぇ。私は買って飲んでみたいよ。すべて買い取ると約束はできないけどね」
「構いません。では次回お試しで、少量お持ちしてみます」
何が来るか分からないけど…3種類あるから1種類ぐらいはアタリがあると思うな。今日だったら豚汁があるから大当たりなんだが、明後日は…さて、なにかなぁ。
「では、本日もありがとうございました」
「こちらこそありがとうね。次回も…あ、明後日か。よろしく頼むね」
裏口まで見送ってもらってギルドを後にする。
俺は教会へと続く坂道を上る、とみせかけて太い木の後ろへ隠れる。崖にめり込むように設置した管理人事務所へするりと戻った。
「ただいまー」
トイレ休憩してから俺のランチタイム。昼は焼きそばパンと豚汁にした。
食後休憩にソファへ寝転がって携帯端末をいじる。レベルアップ後の変化がないかのチェックをしていると、新たな設定画面が開いた。
「あー、やっぱりあったか」
なになに…。
シャワーブースの使用料金設定に、使用時間設定が出来るのか。あと、シャワーブース用のお知らせボードもあるのか。
「確か、海の家では3分くらいだったような…」
うろ覚えだが、3分あれば髪を洗って全身を洗って…忙しいかもしれないけど、出来るよな。ってか3分間シャワーの湯を出しっぱなしにすると結構な量だぞ。
「料金は…5、いや6メレルでもいけるか?」
コルサ達にも相談してみたいところだが、とりあえずは6メレルにしておこう。不評なようなら下げればいい。
「お知らせボードは…」
利用料金5メレルで3分間シャワーを利用することができます。
「管理人室と同じでお湯だと思うけど、水だけの可能性もあるか。一度確認したほうがいいな」
脱衣室の中に入ったら必ず内側からカギをかけてください。
「って、鍵あるよな? これも後で確認しておくか」
シャワーを利用するのはあなただけではありません。後に利用されるお客様のことを考えて綺麗に使いましょう。 忘れ物がないよう、出る前に確認しましょう。
「うん、メッセージはこんなところかな」
ご利用ありがとうございました。
これも付け加えておこう。
お知らせボードの設定を終え、他にも変化がないか確認。目新しいものはなかった。
シャワーは男女ともにお湯が出ることを確認し、脱衣所の内鍵も問題ないことを確認。
「じゃ、そろそろ出かけるか」
今日のお供え物を入れた肩掛けカバンを手に、外へ戻る。
「今日もいい天気だ」
そういえば、まだ雨や曇りを経験していない。偶然だろうが、いい天気が続くのはありがたい。
教会内に入ると、いつもの場所にいつものシスターがいるのが分かった。会釈してもらったので、同じように返してから祭壇へ歩み寄る。
『…女神さま、今日のお供え物をお持ちしました。どうぞお受け取り下さい』
袋に入れたパンとジュースをお供えする。
『日々スキルに助けられて生きています。また、新しいスキルも与えてくださり感謝しています。ありがとうございます』
単なる自己満足なんだが、祈りが届いた感じがして心が落ち着く。
まだ技術的にステンドグラスは難しいのか、教会内に降り注ぐ光は自然光のみだ。ガラス窓が壁いっぱいに配置された建物はこの町では珍しく、教会っぽいとは思う。
教会を後にした俺は坂道を下って、町へ戻る。
「ホント、いい天気だ」
そろそろ洗濯をしたいから、洗濯物を干す干場について考えよう。ロープはあるが、管理人事務所の壁に釘などを打てる気がしない。物干しスタンドのエックスタイプが売っていたら欲しいんだけど…ないかな。ステンレスはここにはないだろうから真鍮とか? いや、錆びるか…直接干すわけじゃなくハンガーを使うから気にしなくてもいいのか? それなら物干しスタンドは木製でもいいんだよな。
と、なってくるとやっぱりツーツーリ木工屋か。何のかんのと連日来ているよな。
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