5.昔話

大昔の話。


私は中学一年生だった。


その頃の私は、正義を振りかざすことに酔いしれていた。

正しい自分に酔っていた。


そして生徒会会長になり、権力を手に入れた。


私はさらに、自分が絶対だと思うようになって、

周りのことも考えずに、自分が正しいと思うことを繰り返した。


校則を強化したり、

少しでも破った人には長々と説教したりした。


それが正しいと、思っていた。


……はずだった。


やがて、誰も話しかけてこなくなった。


無視されて、

気づけば、友達はいなかった。


机の中身が捨てられていたり、

教科書が汚れていたりした。


それでも、何も言えなかった。


味方はいない。


頼れる人もいない。


そもそも、全部、自業自得だから。


全部、私が悪い。


ある日、学校のトイレで吐いた。


後悔が止まらなかった。


自分のしてきたことが、頭の中で何度も繰り返された。


変わろうと思った。


これからは、きちんと心で判断して、

「正しいだけ」をやめようと。


そのときだった。


男子生徒に告白された。


顔は知っていたが、話したことはあまりなかった。


それでも、嬉しかった。


自分を見てくれる人がいることが。


この場所にいてもいいと、思えるかもしれないと、思えた。


一緒に帰ったりした。


他愛もない話をして、

笑ったりして。


楽しかった。


ある日、学校に行くと、


黒板一面に、

私と彼のことが書かれていた。


笑いものにする言葉が、びっしりと。


目眩がした。


吐き気がした。


教室の空気が、全部こちらを向いている気がした。


誰も止めなかった。


誰も消さなかった。


彼は、転校した。


最後に会ったときの、あの目を覚えている。


恨みと、

裏切り者を見るような目だった。


何も言えなかった。


それからは、もう一人でいた。


誰とも関わらず、

関わられず。


それでも、


「正しい私」は、捨てられなかった。


それを捨てたら、

本当に何も残らない気がしたから。


高校に入ってすぐ、自然教室の準備が始まった。


班決め。


余ったところでいいと思っていた。


どうせ、どこでも同じだから。


そのとき、声が聞こえた。


あの人は、確か三玉くん。


クラスでも声が大きくて、

すぐに覚えた。


班の人数が合わず、困っているみたいだった。


少しだけ、目で追ってしまった。


……何か、つらそうだった。


私とは違う、

でも似ている何かを抱えているように見えた。


だから。


なんとなく。


私は言った。


「先生、この班空いてます」

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