日常の延長にある出来事が、気づけば不思議な読後感へ変わっていく作品でした。
主人公の語り口はどこか力が抜けていて、深刻になりすぎない軽さがあります。けれど、その軽さがあるからこそ、途中から漂ってくる違和感がじわじわ効いてきます。最初は何気ない状況を眺めているつもりなのに、読み進めるうちに「これは本当にただの偶然なのか」と、こちらの感覚まで少しずつ揺らされていくのが面白かったです。
特に良かったのは、主人公の人間臭さです。立派なヒーローというより、弱さもずるさも面倒くささも持っている人物として描かれていて、そこに妙な親しみがあります。だからこそ、予想外の事態に直面したときの反応にも説得力がありました。
また、短い中でオチまできれいにまとまっていて、読後に少し笑えるのも魅力です。怖さや不思議さだけで終わらず、どこか創作そのものへの皮肉と希望が残るところが、この作品らしい味だと思いました。
SFやホラーの雰囲気は好きだけれど、重すぎる話よりも、少し肩の力を抜いて読める不思議な短編が好きな人におすすめしたい作品です。