突如として世界が爆発する1分前、死の恐怖に直面した主人公の目の前に「→繰り返し」というボタンが現れます。反射的にボタンを押して難を逃れますが、巻き戻るのはたったの60秒間。爆発の原因究明も避難誘導も到底不可能な短すぎる時間の中で、彼は記憶を持たない幼馴染が隣に座るリビングで、ただ独り幾度となく訪れる死刑宣告のような時間を待ち続けることになります。
カクヨムを読み込んでいる読者なら数々の「ループもの」に触れてきたと思いますが、本作には世界を鮮やかに救うようなカタルシスは一切用意されていません。ただ「自分が死にたくないから」という脆く生々しい理由だけで、無意味な1分間を永遠に繰り返してしまう主人公の、息が詰まるような孤独と罪悪感の描写が秀逸です。彼の苦悩を知る由もなく、「君って優しいんだもん」と笑う幼馴染の無邪気さが、かえって残酷に主人公の心を抉り、物語の絶望感をより深く引き立てています。ショートショートという短い文字数が「60秒」の閉塞感と見事にリンクする、目の肥えた読者にこそ強烈に刺さる珠玉のSFダークファンタジーです。