第6話 冒険者リブラとの出会い

 その建物を前にして私は呆然と立ち尽くしていた。

 ベルドガさんの言った通りギルドはすぐに見つかったけれど、まさか3階建ての建物の屋根の上に巨大な鐘があるとは思ってもいなかった。

「……この鐘は何に使うんだろう? 時報にでも使うのかな?」


 いつまでも呆けていてもしょうがないし、ギルドに入ってみよう。

 ギルドの扉を開けて中に入ると様々な装備をした人たちが受付をする人と話をしていたり、色分けされた大きなボードの前で貼られている紙を見ている人もいる。大声で話をしている人ばかりではないけれど、賑やかな空間だった。

 身分証を作ってもらおうと思ってたけれど、3カ所ある受付は対応中で後ろに並んでいる人も多く、仮に並んでもしばらく時間がかかりそうな雰囲気もある。


 「……時間がかかりそうだし、どうしようかな」

 壁際にあった空いていた椅子に座って受付の列を見ながら呟いた私に隣に立つ人影があったので、そちらに顔を向けると背中に大剣を背負っている鮮やかな赤髪で露出が多い所謂ビキニアーマータイプの鎧の女性が、私のことを不思議なものでも見たかのような顔をしていた。


「……あの」「…っと、悪い悪い」

「ほとんどの【開拓者】はギルドで身分証を作ってもらったら、どこにでもに発生する【異界門アビス・ゲート】を破壊してルースフェルナから他の街や村に続く交易路を復旧させたり、定期的に起きるスタンピードから街を守っている。だから、新人の【開拓者】を見るなんて思ってなくてね」

 私と彼女の言葉が被ってしまったが、私が何かいう前に彼女が言葉を続けてきた。


「まだ自己紹介していなかったね。アタシはリブラ。ここルースフェルナを拠点にしている冒険者だよ」

 冒険者と名乗ったことから考えるとリブラさんはプレイヤーではなくてNPCなんだろう。鎧の形状から肌の露出は多いけど見えている体は引き締まっていて鍛えこまれていることが良く分かるし、胸がぽよんで羨ましい。


「私はナコといいます。リブラさんが話していた通り、今日、【開拓者】としてここに来ました。あの……質問ですが、冒険者と【開拓者】は何か違うのですか?」

「そうだね……基本的に冒険者と【開拓者】が行うことはほぼ同じだけれど、一つだけ違うことがある。【異界門アビス・ゲート】……こいつはアタシら冒険者じゃ破壊できない。

 【異界門アビス・ゲート】からモンスターは出現しないが周囲に生息するモンスターを凶暴化させてしまう。その原理も解明できていないけれど、アタシらは凶暴化したモンスターを討伐して街を守っていた。それでも冒険者の数に対してモンスターの数が多く、討伐してもこちらも無傷ではいられなかったし、モンスターはアタシらの傷が癒えるのを待つことなく交易路を我が物顔で徘徊していた。

 モンスターの襲来を幾度となく討伐や撃退しても終わりが見えず、アタシも含めてすぐに討伐や迎撃ができる冒険者が少なくなって街を守れなくなるかもしれないと思い始めていた時、教会の神官が信託を授かり【異界門アビス・ゲート】を破壊できる者として【開拓者】が一年くらい前にこの世界に来たのさ。

 その時に来た【開拓者】も最初は凶暴化した魔物に苦労していたけれど、大勢来た中の一部が無茶をして【異界門アビス・ゲート】を破壊したことで凶暴化した魔物も徐々に減っていき街を守ることができたんだよ」

 【異界門アビス・ゲート】……これはプレイヤー向けのフィールドボスと戦闘する場所なのかもしれない。そう考えればNPCのリブラさんが破壊できなかった理由にもなる。


「最近は【異界門アビス・ゲート】の出現頻度は落ちてきているが、それでも【異界門アビス・ゲート】が発生する前兆と思しき魔力の淀みが報告されている。ナコも【開拓者】だから破壊することはできると思うが、実力が伴わないうちは破壊しようとしないで報告して、実力のある【開拓者】に任せるべきだろう」

「わかりました。無茶をするつもりはないので、もし見つけた時はギルドに報告します」


「ところで受付の列を見ていたようだが、身分証を作るつもりならまだ時間はかかると思うよ」

「やっぱり……混雑しているのは何か理由があるんですか?」

「最近、新しいダンジョンが見つかってね。そこに出現するモンスターの素材や鉱石が今までない新しい物だったこととダンジョンの最深部にも到達した者がいないから、【開拓者】や冒険者が率先的に探索している最中なんだ」

「……そうだったんですね」

 魔法紙の身分証効果はルースフェルナにいる間は有効とベルドガさんはいっていたけれど、ここにいてもしょうがないからギルド以外の場所を見て時間を潰してこようかな。


「ん? どこか行くのかい?」

「はい。受付が空いてくるのもまだ時間がかかりそうなので、街中をいろいろ見てきます」

「ナコはここが初めてどこに何があるか分からないだろ? 知り合ったよしみでアタシが案内してやるよ」

「いいんですか? リブラさんもギルドに用があったのでは?」

「何か依頼があれば受けるつもりだったけれど、この混雑具合じゃ依頼を受けるのも苦労しそうだからね。だったら、【開拓者】の新人を案内した方が有意義な時間の使い方ってもんだよ」

「……ありがとうございます。お言葉に甘えさせてもらいます」

「よし! それじゃ行くか」

 私はリブラさんの後についてギルドの外に出るのだった。

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