第47話 討伐の申し出
「皆様を召集したのは他でもありません。ここ最近、プロメウス周辺にクオープスの出現が散見されるようになり、徐々に被害を増やしつつ有るからです」
レナがそう言うや、彼女の側近であろう男が重々しく頷く。
「事態は三ヶ月ほど前からだ。プロメウス周辺にはいくつか農村を築き、陸路での食料補給を行っているのだが……そこで見たことのない別種のクオープスが確認されている」
「今までにないクオープス……。確か、ルグドーでもアルス=メリアが、結界内でも仲間を増やせるクオープスを生み出していたね」
「我々が発見したクオープスに、そのような力は備わっていなかった。だが厄介なことに変わりなくてな。狼型のクオープス――それも同種だけでなく、他種族のクオープスも率いて行動している」
「統率能力に優れた個体です。現地の騎士も奴らの連携に手こずり、討伐しきれていません。本当ならば、王都の最強戦力である聖女や従者の力も借りたかったのですが……彼らは今、大臣の外交に護衛として付き添っているため、一時国を離れている状態です」
「それでオルベルグ家のお嬢様も招集されたのですね。それでは他にも?」
丁寧語で話すリンドロウズを物珍しく見る傍ら、その質問にレナの側近が頷いた。
「今回はログナス騎士団長を筆頭に、マライヤーナの従者の他、地方に居る聖女組にも協力を要請している」
「それほどの戦力で、ですか。いささか過剰なのでは?」
「お前も王宮議会のような発言をするでない。アルス=メリアの厄介さは我々が身に染みて理解しているはず。徹底的に潰さねば、安心などできん」
「そうですね……失言でした」
リンドロウズが言い負かされる姿、これは貴重なのではないだろうか?
などと
「前にも話した通り、王宮議会はこの件をあまり重く見ておりません。死者が出ていないことや、外交で手が回っていないためでしょう。ですが、私は奴らの行動が何かの前触れのように感じられるのです。現に現地に居る騎士達も、始めて見るクオープスの行動に不穏な何かを感じています」
「現場で戦っている戦士がそう言うのであれば、確かに無視はできませんね。分かりました。手筈通りに、ノレアも討伐に向かわせます」
そう言うと、ノレアは静かに頷いた。
と、そんな中でレナが与一に視線を向ける。
「差し出がましい頼みなのですが、今回の討伐――与一も参加していただけませんか?」
「俺、ですか?」
予想だにしない申し出。
それに「あ、あの」とルーミエが手を上げて、困惑気味に告げる。
「今回、私や与一さんは身の安全のために付き添う形になったと聞いてたんですけど……?」
「はい。当初はそれで良いと思っていました。ですがルーミエ――貴方の従者を直に見て、考えが変わりました。相当、特異な従者だと私の勘が囁いています」
「それは」
「無論、貴方や与一が許せばの話です。無理強いはしません」
不安そうにチラチラとこちらを見るルーミエ。
対して与一はしばし考え。
「質問なんですけど……戦いの場に出るのは俺だけなんですよね? ルーミエはこの街に残る、と」
聞くとレナは頷く。
「ええ。元より、討伐に向かうのは騎士と従者のみです」
望み通りの返答を受け取り、与一の心は決まった。
「分かりました。なあルーミエ。俺もこの討伐に参加して良いかな?」
「与一さん」
ルーミエのピンクの瞳が揺らぐ。
与一自身も一時、ルーミエから離れるのは心配に感じているのだが。
「不安なのは分かるけど、奴らの悪だくみを阻止しないと、あとからルーミエに危害が及ぶかもだし。それに」
そう言って与一はノレアに視線を向ける。
「折角できた知人が、一人危険な場所へ行くのを見届けるってのも、変な感じだしな」
「私は遅れなんか取らないわ……余計なお世話よ」
きつい目で反論されるかと思いきや、まるで照れたようにそっぽを向くノレア。
それらを見届けたルーミエは、「分かりました」と頷いた。
「レナ様。与一さんも問題ないと言っております。この任務、彼も参加させてください」
「ありがとうございます、二人共。そういうわけです。彼にも説明をお願いしますね、ログナス騎士団長?」
「承知いたしました」
ログナスがお辞儀をして受け入れる。
そして改めてレナは、こちらを見回した。
「この討伐は明後日から開始されます。急な話になりますが、よろしくお願いしますね。皆さん」
話は終わり、一行はレナとの謁見を終えることとなった。
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