辛の行動原理が「弟を救うための計算」と「理不尽を許せない本能」の二層構造になっており、その矛盾が丁寧に積み上げられている。
だから読者は、彼が玄に対して「けど!」と思わず声を漏らした瞬間や、「チカラを貸してくれ」と言葉を絞り出した瞬間に、予想を越える衝撃を受ける。
鉄面皮の人物が揺れる場面の強度は、それまでの無表情描写が厚いほど増すという計算が、きわめて巧みに実行されている。
戦闘描写も極めて秀逸で、単なるスペック自慢に終始せず、論理的な積み上げによる決着が心地よい。勝利に至るまでの思考が見える形となっている。
ここで終わりにしようと思ったけど、チームの形成の理由付けの妙についても言及したい。都合よくほいほい仲間が集まったりせず、それぞれの迷いや矜持を経由しているから、3人の関係にしっかりした説得力が生まれている。