第30話
第九十四話:黄金の太陽と、高原の暴君
エラン高原の最深部。そこは、熟練の冒険者たちがフルパーティを組み、死を覚悟して挑む**「ピットボス」の領域。
空気は重く、大気には濃厚な魔力が渦巻いている。その中心に君臨するのは、巨岩のような肉体と無数の触手を持つ暴君――【ボア・キング】**。
「……いたわね。あれがこのエリアの『利権の塊』、ピットボスね」
エリナは杖を軽く肩に担ぎ、不敵に笑う。彼女の全身からは、全身+4強化防具が放つ黄金の閃光が溢れ出し、薄暗い高原の奥地を真昼のように照らし出している。
「……エリナ、本気か? あいつの一撃は、さっきのアクレシアのガトリングとは重みが違う。掠っただけで、俺の盾ごと粉砕されるぞ」
ゼノンがインテンス・タワーシールドを構え直し、冷や汗を流す。守護霊として幾多の修羅場を越えてきた彼でも、目の前の怪物の威圧感には本能的な恐怖を覚えずにはいられない。
「ふふん、怖気づいたの? ゼノン。いい、今の私たちは、ただのプレイヤーじゃないの。全身を**『資産(オーラ)』**で固めた、歩く戦略拠点なのよ! 損害が出る前に、相手を『過剰なヒール』で窒息させてあげるわ!」
「……はあ、相変わらずのCEO節だな。わかった、俺が崩れればおしまいだ。死ぬ気で支えろよ!」
「言われなくても! 行くわよ、第一フェーズ、エンゲージ!!」
エリナが黄金の杖を地面に突き立てると、【アークチャンドラー】の最上位スキルが発動する。
「『ホーリーサクリファイス・フィールド』!!」
二人の足元に巨大な魔法陣が展開され、眩いばかりの光の柱が立ち昇る。
ドォォォォォン!!
ボア・キングの巨大な前足が、ゼノンの盾に直撃した。大地が裂け、衝撃波が高原の木々をなぎ倒す。しかし、ゼノンのHPバーは、一瞬だけ削れた直後、エリナの**秒速3回の『フルリジェネ』**によって、視認できないほどの速度で最大値へと引き戻された。
「……あはは! 見た!? この圧倒的な**『回復の暴力』**を! あんたが100ダメージ与えるなら、私は200回復させる! これこそが、最強のキャッシュフローよ!!」
エリナの瞳は、CEO時代の冷徹な計算高さと、13歳の少女の純粋な征服欲でギラギラと輝いている。彼女はポーションを贅沢にがぶ飲みしながら、精神PTを極めた破壊フォースをボスへ叩き込み始めた。
「さあ、ここからは私の時間よ! 『ジャッジメント・レイ』、最大出力!!」
+4強化された黄金の杖の先から、純白の熱線が放たれる。それはボスの巨体を貫き、その肉体を内側から焼き焦がしていく。
「グオォォォォン!!」
激昂したボア・キングが、周囲の魔物を呼び寄せる咆哮を上げる。エラン高原中の魔物が、二人の「黄金の光」を目掛けて殺到する。絶体絶命の包囲網。しかし、エリナの口角はさらに吊り上がった。
「雑魚が集まったところで、私の**『時価総額』**は変わらないわ! ゼノン、バリアを全方位に展開しなさい! まとめて一掃して、この高原の全ドロップを『買収』してあげるわよ!!」
ゼノンの盾が黄金の膜に包まれ、迫り来る魔物の群れを弾き飛ばす。その中心で、13歳の聖女は高笑いを上げながら、光の雨を降らせ続けた。
それはもはや戦闘ではない。圧倒的な「力」と「物資」による、一方的な略奪(攻略)。
数十分後。高原の暴君は、黄金の光に飲み込まれ、粒子となって消滅した。
後に残されたのは、山のような希少な宝石、そして最高ランクの**【Lv.40台・インテンス装備の図面】**。
「……ふぅ。いい仕事だったわね、ゼノン。ほら、これが今日の『配当金』よ。全部回収して、次の投資に回すわよ!」
「……まったく。レイドボスを二人で狩るなんて、サーバー始まって以来の珍事だろうな。……なあ、エリナ。お前、本当にどこまで行くつもりだ?」
「決まってるでしょ? この惑星ノバスの全リソースを掌握して、レベル50の頂点に立つ。それが、この物語の『完結(ゴール)』よ!」
黄金のオーラを纏い、戦利品の山の上で杖を掲げるエリナ。
彼女の冒険は、今や一プレイヤーの枠を超え、世界そのものを書き換える**「買収劇」**へと加速していく。
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