第4話 慶太の初恋(4)

今日は待ちに待った文化祭!


うちのクラスは射的と輪投げだ。当てたり投げ入れたところによっては、ちょっと良い景品がもらえるようになっている。ちなみに俺は射的は良かったけど輪投げは全然ダメだった。


準備中に射的をやって、めちゃくちゃ当てたので特別にちょっとした景品をもらった。


とまあ、文化祭の準備は完璧!…なんだけど。


「プラン何も考えてねえぇぇぇぇ…」


「あぁぁぁぁ…せっかく当番同じタイミングにしてもらったのに…」


誤解はしないで欲しいのだが、何も話していないわけではないのだ。話は数日前に遡る。



ーーー数日前ーーー


俺は坂田さんとMANEメイン をしていた。



KE-TA[何処か行ってみたいところある?]


坂田玲衣奈[とりあえず美術部の子のクラスには行きたいかな?]


KE-TA[いいね!俺も友達のクラスには行きたい!]


KE-TA[全クラスになるけど(笑)]


坂田玲衣奈[大丈夫だよ]


坂田玲衣奈[私も全クラスになっちゃうから]


坂田玲衣奈[(о´∀`о)]


KE-TA[(*´∀`)♪]


KE-TA[2組って何だっけ?]


坂田玲衣奈[メンコとかけん玉だって]


坂田玲衣奈[昔の遊びをやるみたい]


KE-TA[メンコやったことないんだよね やってみたいな!]


坂田玲衣奈[私も!あと3、4組の喫茶店にも行きたい!]


KE-TA[あれも面白そうだよね]


KE-TA[5組は占い、6、7組はお化け屋敷、8組は…フォトショップか]


KE-TA[フォトショップって何?]


坂田玲衣奈[いろんな背景で写真をとれるんだって]


坂田玲衣奈[8組の美術部の子や絵が上手い子が背景を描いたり、写真部の子が自分が撮った写真を引き伸ばしてるんだって]


KE-TA[すげえな]


KE-TA[ガチじゃん]


坂田玲衣奈[ガチだよ]


KE-TA[あと、2年生のも面白そうなんだよな…]


坂田玲衣奈[そうだよね]




ーーー



…と、話は盛り上がったのだが…肝心のプランが全く進まない中、ついに当日が来てしまったわけである。


うーんどうしよう…よし!1年の出し物を回ってから考えよう!美術部にも行きたいしな。


よーし、頑張るぞーっ!!!



~~~~~~~~~~~~~~~~~~



…と、思っていた時期が私にもありました…


ピトッ


「うひゃあああああ!!!」


「きゃっ」


最初の悲鳴は俺。次の可愛い悲鳴は坂田さんである。


忘れてた。俺ホラーダメなんだよ。


「さ、ささささ坂田さん!大丈夫!?」


「だ、大丈夫だよ。それより西郷くんこそ大丈夫?」


「だ、大丈夫だよ!もちろ「ワッ!!!」うわっひゃああああ!!!」


な、情け無さすぎて辛い...でも怖いものは怖い!


「…あの…」


「なっ何?」


「手…繋ぐ?」


「はい!!!」


即答してしまった。恐らく安心させようとしているのだろう。俺としては非常に助かる。いろんな意味で。


俺は坂田さんに手を差し出す。


「お願いします!」


「ふふっ。はい。」


坂田さんはそっと俺の手を握る。


かなり安心する。怖いのは怖いけど…


こうしてなんとかお化け屋敷は乗りきった…



~~~~~~~~~~~~~~~~~~



次に行った2組では、俺と2組の男子達が壮絶な争いを繰り広げていた…


「くそおおお!全然ひっくり返らねえ!!!」


「お前!何枚ひっくり返した!?」


「隊長!1枚です!」


「バカヤローッ!相手も1枚だ!このままだと引き分けだぞ!」


「隊長は0枚です!!!」


「うるさい!事実陳列罪だぞ!」


…後にたまたま見ていた別クラスの友人はこう語る…


『ちゃんと叩きつけているのに何回やっても全くひっくり返らない…なんて低レベルな戦いなんだと思いましたね…』



~~~~~~~~~~~~~~~~~~



…とまあ、何も良いところは見せられないまま、俺達は今3、4組が合同でしている執事、メイド喫茶(性別逆転)に居る。


坂田さんはものすごい笑顔だ。可愛いなあ…


ただ、俺は悔しい。坂田さんの笑顔の相手は俺じゃないからだ。


「小春ちゃん格好いい~~~!」


「えへへ…ありがとう。玲衣奈ちゃん!」


梁瀬さんの執事姿がバチバチに決まっている。悔しい。非常に悔しい。


部屋の隅にだらしない顔で後方彼氏面をしている彼氏がいるが、俺は無視する。


一応写真を撮っておこう。後でからかってやる。


因みに俺に接客していたメイド(男)は同じ中学の奴だ。


メガネでサラサラヘアの、いかにも生徒会長か委員長をやっていそうな見た目だが、ゴリゴリの体育会系で、涼平と同じサッカー部だ。


「真面目系ムキムキ女装メイドとかどこに需要あんだよ…」


「知らん!実行委員に聞いてくれ。」


「お前が実行委員だろ!」


「俺があの3人に勝てるわけないだろう。」


「それもそうだな。」


俺のクラスも結構個性的だと思っていたけど、他のクラスもなかなか濃いな…この学校すげえ…



~~~~~~~~~~~~~~~~~~



あ、あまり話せなかった…まあ、中々面白い絵面だったからそれはそれで良い思い出だな。


「西郷くん、次はどこ行く?」


坂田さんが話しかける。うーん、どこにしよう…そうだ!


「5組に行こう!占いだよね。」


俺の提案に、坂田さんは頷く。


そうして、俺達は占いの館に向かった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「占いの館へようこそ…あなた達の運勢を占います…」


謎のベールを被った男子が話しかける。彼が占うのだろう。彼は再び話しかける。


「さて…あなた達の相性を占います…今、付き合ってどれくらいでしょう…?」


「えっ」


「えっ」


「えっ」



沈黙が流れる。



俺は占い師に話す。


「いや…俺達まだ付き合ってないです。」


「は?何で?」


占い師はその口調で大丈夫なのか…?


「いやだってまだ告白してないし…」


占い師は理解が出来ないような顔で俺を見ている。


横に座る坂田さんを見る。恥ずかしそうにうつむいちゃってるじゃん!俺今日良いところ見せられてねー!


占い師を見ると、なんかブツブツ呟いている。下準備かな?


〔いやマジふざけんなよリア充がよぉ…実質告白してんじゃねえか…これだからイケメン野郎はよぉ…様になってるのが余計にムカつく…爆発しろ…〕


何言ってるか解らないけど、なんか顔怖いな…雰囲気作りかな?


すると、水晶が光った。結果が出たみたいだ。占い師が話しかける。


「あー…あなた達の相性は非常に良いみたいですね…無理せず自然体でお互いに向き合ってください…あと爆発しろ。」


なんか最後ディスられた気がするけど、結果は良かったみたいだ…占いを完全に信じるわけではないが、良い結果が出るとやっぱり嬉しいな。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~



さっきから坂田さんが黙ってる。でも怒ってる感じではないな、たまににへっと笑ってるし。可愛い。


次に行くのは8組、1年生最後のクラスだ。


(ツーショットで良い思い出を残すぞ!)



~~~~~~~~~~~~~~~~~~



…と、意気込んだは良いけど…


(俺、坂田さんに避けられてる!?)


さっきから頑張ってツーショットを撮ろうとするけど、近付こうとすると坂田さんが離れていく。


(お、俺、何かしたかな…?確かに格好いい所は何も見せてないけど…)


今、坂田さんは少し離れたところで友達と話をしている。…あ、こっち見た。あれ?近付いてくる。


「ご、ごめんね!」


えっ?何で謝るの?


坂田さんが再び口を開く。


「さ、避けてるみたいになっちゃって…近付かれるの、嫌じゃないの!むしろい…っじゃなくて!はっ恥ずかしくて!…私、男の人にこんなに近付かれるの初めてで...西郷くんのこと、嫌いって訳じゃないから!むしろす…っじゃなくて!!!だ、大丈夫!大丈夫だから!!!」


「い、いや、大丈夫!大丈夫だから!落ち着いて!」


「えっあっうっうん…ふー…」


良かった…坂田さん落ち着いたみたい。


とりあえず避けられてた訳じゃないとわかって安心した。確かに、あまり目立ちたがる人じゃ無いもんな…


それにしても...


「ふっ…くくっ…」


ダメだ…ニヤニヤが止まらねえ…慌ててる姿めちゃくちゃ可愛い…あのにやけ面野郎駿太バカに出来ねえよ…


「ちょ、ちょっと!何で笑うの!?」


「ご、ごめんって…慌ててる姿が…くくっ…可愛くて…ふふっ。」


「えっ!ちょ…も、もう!」


「ご、ごめんって!何でもするから許して!」


俺は慌てて謝罪をする。怒った姿も可愛いと思うが、それが原因で嫌われたらかなわない。


坂田さんは少し考えて、俺に言った。


「何でもって言ったよね?」


「う、うん…」


な、何をされるんだろう…


坂田さんが再び口を開く。


「じゃあ、あの絵の前でツーショットを撮って。」


坂田さんが指を指したのはサンセットビーチの絵だ。それくらいならお安いご用、むしろ願ったりかなったりだ!


「い、いいよ!わかった!」


俺はふたつ返事でOKした。


そして、2人で絵の前に立つ。俺は無難にピースサインをする。


「ハイ、チーズ。」8組の人がシャッターを押す。




瞬間




坂田さんが腕にしがみつく。




…えっ!?




パシャっと音が鳴ったときには俺の頭は真っ白になっていた。


やべえ、俺今どんな顔しているんだろう…


その時、「もう1回!写真撮って!」と声が聞こえた。


坂田さんだ。俺の腕にしがみついたまま話している。


8組の人が答える。


「いいよー何枚でも撮ったげる!じゃ、いくよー。」



8組の人の言葉通り、何枚もツーショットを撮られた。


俺の顔、大丈夫だったかな…?



~~~~~~~~~~~~~~~~~~



その後、俺達2人は色々回った。3年生の屋台の食べ物はどれも美味しかったし、2年生の所には自作のコーヒーカップがあった。あれ作れるんだ…!


ステージでは軽音楽部や有志でのバンドを楽しんだ。


坂田さんはロックはどうなのかな?と思ったけど、楽しそうに聞いていたので良かった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「いやーステージ楽しかった!」


「本当、みんな上手だったね!」


「…と、言うことで!最後に美術部に行こう!」


「えっ本当に行くの?」


「当たり前じゃん!俺、楽しみにしてたんだ!」


「良いけど…自分の作品を見られると少し恥ずかしいな…」


そう言いつつも、坂田さんもついてくるみたいだ。良かった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~



美術部の教室に着くと、俺達以外には誰もいなかった。


(ありがとう…!増田さん…!)


実は俺、美術部の人にお膳立てを頼んでいた。


増田さんは俺が坂田さんを誘うときにサムズアップしていた人だ。



そう。俺はここで坂田さんに告白する。



その前に、色々作品を見ておこう。


きれいな絵もあるし、個性的な立体物もある…どういう思考で作っているんだろう…もちろん、褒めてる。


その時、一際目を引かれる作品があった。


ちょうど今みたいな夕暮れの絵だ。


「綺麗だ…」


ふと声が出た。すると、横に立つ坂田さんがビクッと反応する。もしかして…


「これ、坂田さんの絵?」


坂田さんはゆっくりと頷く。良く見ると、絵の下に坂田さんの名前と題名がのっていた。



【幸せ】坂田 玲衣奈



「この題名って…どういう意味なのか…聞いて良い?」


坂田さんは頷く。そしてゆっくりと話を始める。


「私、夕暮れが好きなの。単純に綺麗っていうのもあるけど…」



「お母さんが、お父さんに告白した時だったから。」



ドキリとした。バレそうとかそう言うことではない。夕日に照らされた彼女が、美しかったから。



坂田さんは話を続ける。


「今日、西郷くんと回って、改めて思った。いや、入学したとき…もっと前だね。西郷くんは覚えてないかもだけど、中学の時に会ったことあるんだ。」


俺は必死に記憶を探る。…ダメだ、思い出せない…


俺の顔を見て、坂田さんはクスッと笑った。


「覚えてないのも無理無いよ。あのときの私は髪もボサボサで、ずっとうつむいていたから…」


「夏祭りの時、友達が風邪を引いちゃって一緒に行けなくて…1人で行ったけど楽しくなくて…しかも迷子になっちゃったの。…その時ね、ヒーローが現れたんだ。」



思い…出した…!



坂田さんは優しい笑顔で話を続ける。


「そのヒーローはね…泣いていた私を必死に励ましてくれて、いろんな話で私を笑かしてくれた。暗いところが苦手みたいでずっと震えていたけど…それでも、私にとっては誰よりも格好いいヒーローだった…!」


「それ以来、全く会えなかったけど、高校生になって、やっと会うことが出来たんだ…髪色は変わっていたけど、その『格好良さ』は何も変わっていなかった…」



ヤバい…待って…




「西郷くん、私…ずっとあなたのことが」





「待って!!!」





坂田さんがビクッと反応する。


あ…悲しそうな顔になってくる…違う!違うんだ!



坂田さんが震えた声で話す。



「ご、ごめ「違うんだ!!!」」



もう一度、坂田さんがビクッと反応した。


俺は話す。頭は真っ白だけど、思いを話す。




「その言葉は...俺から言わせて…!」





「俺は…!あなたのことが好きです…!」





言った…言ったぞ…!クソ…全然格好良くねえ…

でも、その言葉は俺から言いたかった…


俺は坂田さんを見る。多分、俺の顔すっげえ情けない。





泣いていた。




ヤバい…ミスったか…




俺の顔を見た坂田さんが話す。




「ち、違うの…!泣いてるのは…!嬉しいの…!」




「私も好きなの!!!」




俺は頭が真っ白になった。




せ、成功…だよね?俺、坂田さんに好きって言われたよね?





途端、後ろからガタンッと大きな音が鳴った。


2人でその方向に向くと、何人か人がいた。




俺や坂田さんの友人達だ。




俺は再び頭が真っ白になった。




~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「お、お前ら…人の一世一代の告白を呑気に見学しやがって…!」


「痛ででででで…悪い!悪かったって!」


俺は洋介にチョークスリーパーをかける。おい!ケラケラ笑ってる駿太と涼平!次はお前らだぞ!!!


「俺…!増田さんにしか言ってなかったのに…!」


「その増田さんに言われたんだよね。」


「なにぃ!!!」


その増田さんを見ると、坂田さんにポコポコ叩かれていた。すごい幸せそうな顔をしている…


坂田さんが増田さんに叫んでいる。


「もうっ!もうっ!誰にも言わないでって言ったのに!!!」


「ご、ごめんごめん!ちょっとおもしろ…じゃなかった、興味深かったから…!」


俺はその発言を聞いて、違和感を覚えた。


増田さんの顔を見る。


俺にウインクしてきた。ま、まさか…!


増田さんがケラケラ笑いながら話す。


「いやほんとごめんって!いやまさか、2人に『告白するからこの教室を空けてくれ』って言われると思わなかったからさ!!!」



俺は呆然とする。坂田さんが俺に告白する機会を伺ってたなんて…


洋介が口を開く。


「いや、なんかもう…お似合いだよ。2人。」


俺は再び洋介にチョークスリーパーをかけた。



次へ続く!

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