夏蝉 ~ 太陽物語

まだ神様が人の言葉を話していた頃のお話


エメラルドの身体と水晶の翼を持つ美しい森の精が

トネリコの木に住んでいました

森の精もトネリコもお互いのことが大好きでした


ある朝、森の精がお散歩してると

クワガタが一目で恋をしてしまいました


黒い身体を震わせながら、クワガタが向かって来ます

森の精は恐ろしくなって、トネリコの優しい木陰に隠れます


毎朝、クワガタはトネリコの木にやって来ました

だけど枝葉が邪魔して、森の精には近づけません

「いつかこの手で捕まえてやる!」

クワガタは恐ろしい声で、大きなハサミをガチガチさせます


森の精ははらりと涙を流しました

「このままでは、お日様にも会えないわ。」

「大丈夫。君に触れさせやしないさ。」

そう言うとトネリコは森の精の身体を優しく包みました

「僕がいいというまで根っこに隠れているんだよ」


そうして森の精は、美しい夏蝉になりました

今は昔の物語

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