校舎の掲示板に貼られたままの「遺物保存同好会」の勧誘ポスター、それを見つめる見知らぬ女性——この小さな違和感から、和田緋音と探偵猫・絵本千蔭が過去の謎を掘り起こしていく構成が、シリーズ既読者にも新規読者にも入りやすい一篇になっている。
過去の生徒会日誌に残された「いつ、月原くんに渡されたのか?」という不可解な一文と、無残に破かれた3ヶ月分のページという物証が軸になっており、当時の関係者の証言を一つずつ積み重ねながら真実に迫っていく構成は短編ながら丁寧だ。「やっと渡せた」という台詞に至るまでの時間の積み重ねが、単なる謎解きを超えた感慨を残している。
完結済み・全8話・1万8千字強というコンパクトな尺で読み切れる。絵本千蔭シリーズの一篇として、過去の残響が現在に語りかける様を味わいたい一作だ。