第10話 皆で喜ぶ
「みーみ、よかったでしゅ!」
「すごいことが起こりましたね!お店を任せてもらえるかもしれないのでしゅね!」
「南、言いたいことがたくさんあるだろうけれど、まずは目の前の仕事を無心でやってみるんだ。それがいちばんきみが望んでいることだよ」
世界がまた私の耳だけに
みんなの声がいつもより多く感じて、そのことを感じながら作業をしていると、世界がまた
「まだまだいるって言っただろ。きみのそばにみんないる」
と力づけるように言ってくれた。
私は胸に手を当てる。いつの間にか汗が嘘のように引いていた。
本作りのためのコピーを始めると、思ったより一冊一冊の本の大きさも違えば重さも違うことがわかり、まず一冊の本のコピーをし終えると、満足感が得られた。
「結城さんにコピーを任せられるようになったら、私は徹夜しなくても帰れるようになるかなぁ」
店長が
「あなたも飲む?」
珍しく店長が私にコーヒーを勧めてきた。
「はい、ありがとうございます」
私はその日、定時より十五分を過ぎてタイムカードを押してセンターを引き上げたが、すがすがしい気持ちだった。
「南、サービス残業はなくなるんだな、よかったな」
世界がまた私を包むようにして声をかけてきた。
「俺もサービス残業はよくないと思っていたよ。それは頃合いを見計らって必ず言えるときがくると思っていたんだが、店長が先に察してくれたんだな」
そうなのだ。まさか店長から言ってくださるとは思わなかった。
「まずはきみをわかってもらったってことだな」
世界、みんな、仕事でステップアップできることだけを考えて、とにかくまず働いてみる。私が改めて誓いを立てると
「みーみ!」
「みーみ!」
キィとクゥの感触が飛びついてくるのがわかった。
「応援するよ、南」
「姫、あたしたちも応援します」
「僕も」
「私も」
次々に世界、アル、デル、ココ。
☆
「家の前に着くバスに間に合わなかったな」
世界が微笑んで言っているのが感じとれた。
(顔も見たことがないのに?)私はうつむいてほくそ笑んだ。
「俺の顔、気になる?」
世界がすかさず私に尋ねてきた。
「ううん。でも、会いたい……かな……世界とみんなに……」
バスがバス停に入ってくるのを見ながら、私は声に出して言った。
バス停に向かう道すがら、世界や天使たちが周りで歩いているかのように声を出して答えた。
「ああ、俺も会いたい」
「みーみ、あたちも」
「みーみ、僕も」
「あたしも」
「僕も」
「私も」
「みんなどこにいるの……」
私はボソッとした声で
「俺たちは、いつも南のそばにいる」
「世界……それじゃわからない……」
そう言って自分の言ったことにまた少し寂しくなってしまった。
バス停で時間を確認して、私は駅前のセブンイレブンに寄ってダブルクリームのシュークリームを一つ買った。
ダブルクリームのシュークリーム、誰かの好物だった。誰だったか?ううん、いいや、私の好物でもあるんだもん。
「自分へのご褒美…… いつかみんなの分を買って帰れるくらい、いっぱいいっぱい働いてお金を
私はシュークリームの入った袋をリュックに入れてバスに乗車した。
「みーみ、嬉しいでしゅ!」
「僕たちもそのシュークリーム、今度世界に買ってきてもらうでしゅ!」
キィとクゥのはしゃいだ声がいつまでも耳に響いていた。
キィとクゥは自分では買いに行かないんだ…… 行かないんじゃなくて行けないのかな……
その思いについては、まだ誰も答えてはくれなかった。
☆
(キィ、クゥ、みんな)
(しぇかい)
(しぇかい)
(世界)
(世界)
(世界)
(南の変化に伴い、気になることが出てきている。気付いているか?)
(わかりましゅ、ときどき、みーみは忘れかけていましゅ)
(そうだ。俺たちと関わるようになって、南は……)
(変化はあたしたちのせいなんですね)
(世界、僕たちまた姫の前から消えるの?)
(嫌でしゅ、しぇかい)
(僕も嫌でしゅ)
(南の様子次第だ…… みんな、覚悟しておいてくれ、リュイ、ルシファも、南のためにできるだけのことをしておいてくれ)
(わかりました…… 世界……)
(私もわかりました……)
☆
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