精神科医を志す医学部生の迅は、心の奥に触れられたくない過去を抱えた日々を送っている。
そして彼が、万引き依存症に苦しむ薬学部生の由貴と出会うことで物語が動いていきます。
まず興味深く感じたのは、依存症からの回復を支援する「リカバリーアドバイザー」として関わることになった二人の交流です。
物語は依存症というテーマを軸にしながらも、大学内で連続的に発生する不可解な事件、さらには殺人未遂事件が発生するという緻密な構成にどんどん引き込まれました。
なにより登場人物たちが抱える嫉妬、劣等感など、人間の感情が複雑に絡み合いながら物語を動かしていくところが魅力的です。
複数の事件や人間関係が描かれながらも、物語全体の構造はとても整理されており、伏線と心理描写がとにかく秀逸。
個人的には迅のクライミング技術のところが好きで、スリルとユーモアが絶妙なバランスで配置されているのが心地いいです。
まだ拝読の途中ではありますが、引き続き謎を追いながら楽しみたいと思います。
大学を舞台にした心理ミステリーでありながら、事件解決ものという枠には収まらない物語をぜひお楽しみください。
この作品は、事件そのものの謎だけでなく、登場人物たちの心の揺れや隠しごとが物語を動かしていく、心理ミステリとしての面白さが魅力の作品だと思います。
特に秀逸だと感じたのは、由貴の抱える衝動が、単なる事件のきっかけではなく、本人の弱さや不安、人に知られたくない秘密として丁寧に描かれている点です。小さな綻びが、後の大きな事件へとつながっていく流れに説得力があります。
また、つばさが事件の違和感を追っていく場面にも、この作品ならではの個性が出ています。年齢の幼さと鋭い観察力が同居しており、周囲の大人たちの感情や行動を読み解いていく姿が、物語に独特の緊張感を与えています。
単なる毒物事件や学園ミステリではなく、それぞれの人物が抱えている嫉妬、依存、劣等感、善意の危うさまで絡み合っていくところが、この物語の奥行きだと思います。
複数の出来事が積み重なりながらも、構造がしっかり組まれているため、物語が破綻なく進んでいる点も読み応えがあります。まだ見えていない真相や人物たちの関係がどう整理されていくのか、気になる展開が待っているので、これからも追いかけて行きたいと思います。