一度も「好き」と書かない。一度も「辛い」と書かない。それでも全部伝わる。
「またね、とわたしはいわない。これは待ち合わせじゃない。偶然、会っただけだから。」——この否定の形でしか守れないものがある。
関西弁の温度が絶妙で、笑いながら自分を刺すような台詞が、標準語では絶対にこの重さにならない。最後まで読んだとき、何が刺さったのか一瞬分からない。分かったとき、もう遅い。
そしてこの作品は入口に過ぎない。『はと麦茶』『ガーリックライス』を読んでから戻ってくると、全ての台詞の意味が変わる。三作読んでほしい。