第2話 天使オルーレのめちゃめちゃ展開②

「おまえ……なんでもできるのか? 自分のやりたいように? 嘘だろ」

 

 サトシは半信半疑で聞く。


「なんでもできるわ。だけど制限があって、1日3つまで。それ以上は、この人間の姿じゃ負担がかかって無理。元の姿にならないと」

 

 オルーレは腰に手を当てて、ため息をつく。


「マジかよ。1日3つもやりたいようにできるのか。すごいな」

 

 サトシは、うらやましそうに言った。


「今日は、もうおしまいよ。傘を取り除いて、台風を発生させて、地震を起こした。これで3つだから」

 

 オルーレは疲れた様子で言った。


「ちょっと待て。言ってることが本当だとして、明日もこんなことしてくるのか?」

 

 サトシは不安そうに聞く。


「う~ん……明日は、もっときつい展開にしようかな」

 

 オルーレは再び腕を組みながら答えた。


「俺のことは、ほっといてくれ。おまえ、頭おかしいよ」

 

 サトシはそう言って、くしゃみをする。

 

 ずぶ濡れのまま話をしていたから、体が冷え切ってしまった。

 

 サトシは鼻水を垂らしたまま、椅子から立ち上がり、


 「このままだと風邪ひきそうだ。さっさと家に戻らないと」

 と、言って、教会の出入り口へと向かう。


 サトシは、「あっ」と思い出したように、オルーレの方へと振り向いて、

「この教会のように、俺の家にも『結界』とかいうのを張ってあるのか? それを張っていれば、台風や地震が起きても無事なんだよな?」

 と、聞いた。


「もちろん張ってあるわ。大丈夫よ。張らずに家が潰れていた方がおもしろいけど、私も一応そこに住むからね。仕方なく張ったわ」


 オルーレは、そう言って、サトシの後をついて行こうとする。


「えっ、ちょっと待て。俺の家に住むつもりか?」

 

 サトシは驚く。


「そのつもりだけど。その方がおもしろそうでしょ」

 

 オルーレは、ニヤリと笑みを浮かべる。


「親にどう説明するんだよ?」

 

 サトシは困惑しながら聞く。


「明日には、また、『なんでもできる力』が使えるから、私は、あなたの『妹』ってことにする。あなたって兄弟いない一人っ子でしょ。今日は、彼女ってことにして」

 

 オルーレは答える。


「はぁ!? 彼女って言っても、おまえ30代ぐらいだろ? 高校生の俺とじゃ釣り合わねぇーよ。年齢的に教師と生徒の関係だろ」

 

 サトシは苦笑する。


「それでいいじゃない。教師と生徒のカップルなんて、人間の恋愛ならよくあるでしょ?」

 

 オルーレは言った。


「いや、ないだろ。仮にあったとしても親は納得しない。そもそもおまえが本当に天使で、なんでもできるということを、俺は、まだ受け入れてない。だからといって嘘ついてるとも思えない。あぁ、もう面倒くさい」

 

 サトシは頭を抱える。


「じゃあ、今、この場で変身してあなたと釣り合う子になるわ。人間の変身なら、まだ2回できるし。年齢的に17歳ぐらいの高校生でいいわね?」

 

 オルーレは言った。


「人間の変身も制限があるのか?」

 

 サトシは聞く。


「ええ、そうよ。1日3回よ。『なんでもできる力』と同じく1日3回。変身したら、私の言ってること。信じなさいよ」


 オルーレは、そう言うと、魔法の呪文を唱えるみたいに、ぶつぶつとつぶやき始め、

「トランスフォーム!!」

 と、叫んだ。


 眩しい光と共に、オルーレの手、足、体、頭、髪が徐々じょじょに変化していく。


 そして、見た目は10代後半の美人女子高校生へと変化した!!

 

 身長は170センチぐらい。

 

 黒のタンクトップとジーパン。

 

 シワなどがないピチピチ肌。

 

 黒髪のサラサラのストレート。

 

 細身な体つき、胸はBカップ。

 

 スラッとした手足。

 

 まるで10代向けのファッション雑誌の女子高校生モデルのようだ。


「どう? これでいい?」

 

 オルーレは腰に手を当てて言った。


「……あ、ああ。すごいな。マジかよ」

 

 サトシは変身したオルーレの姿に見惚みとれてしまった。


 オルーレは、どんなもんだいという誇らしい感じで、

「じゃ、行きましょ」

 と、言った。


 自宅へと向かう道の途中で、サトシは、

「とりあえず、明日、街の状態を元に戻せよ」

 と、瓦礫がれきの山を見ながら言った。


「えぇーやだ。『妹』になること、街を元に戻すこと、これで力を2つも使って、あと1つだけになっちゃう。別にこのままでいいじゃない」

 

 オルーレは拒否する。


「明日は1つになったとしても、次の日にはまた3つ使えるんだろ? 大体だいたいさぁ、1日3つもいらないだろ。1日1つでいいよ。俺の人生をおもしろくさせたいんだったら、とにかく街を破壊して、死人を出すようなことはするな」

 

 サトシはイライラしながら言った。


「なんで? おもしろいじゃない。あなたの嫌いな学校も潰れたし」

 

 オルーレは不思議そうに言った。


「いや、学校は………」

 

 嫌いじゃないと言って否定したかったが、口には出せなかった。


 だって、スカッとしたから。


 クラスメイトが死んでも、なんとも思わなかった。


 想いを寄せていた前川弘美が目の前で死んでも、特に思わなかった。


 このオルーレの力があれば、やりたい放題できる。


「急に黙ってどうしたの? 何か考えごと?」

 

 オルーレは戸惑とまどった様子で言った。


「俺もその力が欲しい」

 

 サトシは言った。


「えっ?」

 

 オルーレはキョトンとする。


「俺の人生を劇的におもしろくさせたいんだろ? めちゃめちゃにしたいんだろ? それなら、俺にも同じ力を与えろ。きっと、おもしろくなる」

 

 サトシは不敵な笑みを浮かべる。


「それは無理。これは私達、天使だけに与えられた力。他の者に与えることはできないの」

 

 オルーレは申し訳なさそうに言った。


「そうか」

 

 サトシは残念そうに下を向く。


「……でも、何かやりたいことがあったら言ってみて。劇的におもしろくなりそうなら、叶えてあげる」

 

 オルーレは励ますような感じで言った。


「やりたいことかぁ……いきなり言われると迷うな」

 

 サトシは腕を組みながら考える。

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