【創作怪談】ゲンさん

とるてたたん

第1話

 私の町にはゲンさんという噂があります。ゲンさんは本当はドッペルゲンガーというらしいのですが、みんな親しみを込めてゲンさんと呼びます。ゲンさんは私の町の真ん中にある神社に普段はいます。そこに行ってお願いをすると、次の日からは自分の分身としてやらなきゃいけないことをやってくれるのです。

 私も一度、一年生の時に使ったことがあります。あの頃はクラスにいるのが辛くて、学校に行きたくありませんでした。それでゲンさんの噂を思い出して、神社に行ってお願いしました。明日から私の代わりに学校に行ってきてほしい。しょせん噂です。それが叶うだなんて思ってもいませんでした。それでもなんとかしたくて、お願いしました。そして次の日、恐る恐る学校を休みました。お母さんにはバレたくなかったので、適当に山で遊んで帰りました。学校になんの連絡も入れていないのに、学校からの電話は来なかったそうです。それで私はこの噂が本当だと知りました。本当だと知ったからこそ、使うのが怖くなってそれ以来使っていません。でも、ゲンさんは困っている人を助けてくれる良い人なんだと思います。

 4年生になったある日、偶然私の友達が神社でゲンさんにお願いしているところを聞いてしまいました。なにをお願いしているかはわかりませんでしたが、私とあの子はこの後遊ぶ約束をしていました。

 もし私と遊ぶのを代わりにゲンさんに行かせていたらどうしよう。

 そんなことはないとわかっています。それでも一度その考えを持ってしまったら怖くて、友達が神社から離れた後、必死にお願いしました。

 もう誰かの代わりになるのはやめてください

 そのお願いを聞いてくれたかどうかはわかりません。それでも、なんだか叶ったような気分はありました。待ち合わせの山のふもとに行ってみると、友達はいました。その後山で二人楽しく遊びました。この子は私と遊ぶのが嫌じゃなかったんだと思うとすごく安心できて、いつもより楽しく遊べた気がします。いつの間にか夕暮れになって、その子とバイバイをし、スキップしながら家に帰りました。

 

 家のドアを開けると、いつも聞こえるお母さんの「おかえり」の声が聞こえませんでした。

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