カクヨムはラーメンフェスとか牛丼屋です。
ラーメン好きな人はラーメンを頼みます。
牛丼屋に来る人は牛丼しか頼みません。
ですがたまに、違う方向の気合の入ったメニューが、期間限定で出てきたりします。
私にとってはこれはそういう作品でした。
別の方はスイーツに例えておられますが、私はこの綺麗に並べられた料理が丁寧に詰められた箱を開けた時に、これは幕ノ内弁当だとそう感じました。
おかずの配置に嫌味もハッタリも無駄も無い。目は自然と次のおかずに行くし、あまり好きではない食べ物まで美味しそうに見えます。
こういうものが無料で配られているのなら、並んででも貰ってきて蓋を開けてみるべきでしょう。
その方が、他の牛丼だって美味しく感じられるはずです。
まず語り口が非常に魅力的で、軽妙な独白とシリアスな状況のギャップが読んでいて心地よいです。
主人公の飄々とした性格と、内心の冷静な観察が絶妙に噛み合っていて、自然と引き込まれます。
貴族社会の価値観や空気感もよく描かれており、「魔法の素質がない=価値がない」という残酷な基準が、シゼルの立場を際立たせています。
その中で、主人公が基本的には“関わりたくない側”にいながら、最終的に一歩踏み出す流れがとても良いです。
全体として、コメディ寄りの語りから一転して重みのあるシーンに繋がる構成が上手く、キャラクターの魅力と物語の芯がしっかり伝わる導入でした。
続きを読みたくなる力があります。